2023年7月16日(日)開催
【開催日】
2023年7月16日(日)
【出演教員】
渡邊 崇 特任教授
足立 知謙 特任教授
(専攻・入試説明、レコーディング解説、Q&A)
金 慶來 助教
【出演者】
「夕方と猫」
Vocal : 秋宗 亮太朗
Guitar : 佐野 久志
Bass : 小木曽 真裕
【レコーディング・メンバー】
Drum : 八木 遥香
Keyboard : Kalura
Vln : 谷口 響子
Vc : 田中 睦
ミュージッククリエーション専攻は、作曲の基礎的な所から始まり、DAWによる打ち込み、レコーディングやミックスダウンに至るまで、音楽を制作するために必要な技術を、現役の音楽家でもある講師陣から直接学べる専攻です。
今回のオープンキャンパスでは、渡邊崇、足立知謙教授によるミュージッククリエーション専攻の概要説明と、本学のスタジオ設備「K号館録音スタジオ」でのレコーディングデモンストレーション見学会が催されました。
「20年後も実力派」。
これはミュージッククリエーション専攻が掲げる、卒業生の人物像です。
日進月歩で変化するのはテクノロジーだけではありません。音楽の流行はもちろん、人々のライフスタイルや社会そのものも朝令暮改のスピードで変化していきます。
そのような時代の変化に柔軟に対応していくためには、付け焼き刃のような知識や技術ではなく、「考えるための基礎力」を身に付けておく必要があります。
ミュージッククリエーション専攻は、卒業生が20年後も実力派であり続けるために必要な設備とカリキュラムを揃えています。
夏のオープンキャンパス後半は、大阪音大のK号館録音スタジオにて、ミュージッククリエーション専攻の学生が所属するバンド「夕方と猫」によるレコーディングのデモンストレーションが行われました。
レコーディングとは、生演奏された音をマイクで収録していく作業です。昨今はDAW上での打ち込みだけで完結させた音楽も多いですが、生演奏によるニュアンスで音楽にグルーヴやダイナミズムを与えることがレコーディングの意義です。
MCrでは、音楽の完成度を大きく左右するレコーディングを重視しています。
今回は、レコーディングのデモンストレーションを見学することで、生演奏ならではのグルーヴやダイナミズムを感じていただきました。
まずは、バンド「夕方と猫」のコンピューターによって作られたDemo音源を試聴。
このDemo音源を元にして、各パートが演奏をしていくことになります。
Demo音源がそのまま世に出ることはないですが、丁寧に作られたDemo音源はレコーディング時の演奏者に大きなヒントを与えます。そのため、Demo音源はできるだけ丁寧に、完成度の高いものを目指して作ることが重要です。
次に、各パートの録音ブースの見学を行いました。
K101録音スタジオには複数のブースがあり、それぞれ異なる楽器を収録するために作られています。
まずはボーカルブースから。コンデンサーマイクとCue Boxだけが置かれた狭い空間ですが、そのレコーディングの様子はさながら「THE FIRST TAKE」のようです。
次に、ギター、ベースのブースへ。
今回はギター・ベース共にアンプを通さず、直接ラインで録っているため、録音ブース内ではピックで弦を鳴らす音だけが小さく響いています。
ギター・ベースと同じブースながら、生音を出しているのはバイオリンとチェロ。
生楽器なので、より自然な音で録るためにはマイクの位置が重要になってきます。
音楽作家にとって、クラシック系の楽器を使った作編曲や、録音のディレクションができるスキルは、大きなアドバンテージとなります。
このように、在学中から様々なクラシック系楽器の演奏に生で触れられる点は、100年の歴史を誇る音楽単科大学だからこそできる利点だと言えます。
次に、グランドピアノのブースへ。
グランドピアノは音のダイナミクス(強弱差)が激しかったり、筐体の場所によって響く音が大きく異なったりと、綺麗に録ることが難しい楽器のひとつです。
実際にグランドピアノを録音してみることで、電子ピアノとは全く違う豊かな表現力が分かります。
今回の使用楽器の中で、最も大きな音を出していたのがドラムです。
バスドラム、スネア、シンバルには別々にマイクが設置されており、ミキシングコンソールでバランスを調整することができます。
どのブースでも、「途中の4小節だけ録り直し」といったクイックパンチ、「1箇所にシンバルだけを追加」といったオーバーダビングも、K号館録音スタジオなら自在にできます。
また、各ブースで同時に演奏し、それぞれの音をリアルタイムでモニタリングしながら演奏することも可能です。
録音はある程度まで進んでいましたが、ディレクター(足立知謙教授)は少し満足していない様子でした。
「演奏が何だか〝お利口さん〟という感じがして、面白みに欠けるかも。もう少し暴れて欲しい」
譜面通りに演奏することだけが良い音楽、というわけではありません。
とはいえ、何を指針に演奏すれば「良い」のでしょうか?
それを指し示すのが、ディレクターの役目です。
今回、ディレクターの一言によって再録音されたのですが、元の録音と「少し暴れた」再録音とでは、音楽の面白さが歴然!
この差には、参加者全員が感慨を受けていました。
短い時間の中でしたが、レコーディングの仕組みやプロセス、そしてディレクションによるニュアンスの変化までを感じ取れた、実りのあるオープンキャンパスとなりました。
取材・文:BUBBLE-B
写真:旅するグルメライターけいたろう