2023年6月24日(土)開催
【開催日】
2023年6月24日(土)
13:30~16:00
【出演講師】
宮川智希
(Sleepfreaks講師)
【司会】
渡邊 崇
(Cr専攻 特任教授)
【出演学生】
山下愛乃
(作曲デザイン・コース 2年生)
森山和哉
(ミュージッククリエーション専攻 2年生)
坂本柊弥
(ミュージッククリエーション専攻 2年生)
※出演順(学年は出演時のもの)
【主催】
大阪音楽大学 ミュージッククリエーション専攻
大阪音楽大学 短期大学部 作曲デザイン・コース
従来のサンプルベースの歌声合成と、AIによる歌声合成のハイブリッド手法を採用した新しい歌声合成エンジンを搭載しており、これまでの歌声合成ソフトではなし得なかったような細かなニュアンスや、人間らしい「あいまいさ」まで、自在に表現できます。仮歌用のバーチャルシンガーとしての利用はもちろん、本格的なボーカルトラックの制作にも即戦力になり得ます。
講義はSynthesizer Vのエディット画面をスクリーンに投影しながら進められました。
Synthesizer Vは他の歌声合成ソフトと同様に、ノートに日本語(もしくは英語・中国語)の文字をアサインするだけで簡単に歌声を合成できるのですが、その精度向上のエンジンにAIが使われており、ユーザー自身で設定を詰めなくてもある程度のクオリティが保たれることが特徴です。
「シンガー」のライブラリを切り替えることで声を変更したり、「AIリテイク」機能を実行することで微妙な差異のある別テイクが生成されるなど、細かな設定を詰めなくてもイメージしたニュアンスに近づけていくことができます。
また、個別のノート一つ一つに対してピッチなどのニュアンスを付けたり、発音の前にブレスを入れるといった機能をはじめ、声の張りとなる「テンション」や、吐息の混ざり具合の「ブレス」、声の年齢や性別となる「ジェンダー」などのパラメーターを動かすことで、よりリアルな歌声の実現も可能です。
実際にSynthesizer Vを使用した宮川先生のオリジナル曲の解説では、様々なテクニックが披露されました。
強めのコンプレッサーをかけてアタックを強調したバッキングピアノや、Synthesizer Vの声をサンプリングしてメロディのように使ったユニークな音色、ピッチ変化を多用して強いグルーヴを生み出すベースラインなど、各トラックに施された処理にはプロの技が随所に散りばめられ、それら一つずつについて丁寧な解説が行われました。
さらには楽曲を効果的に聴かせるためのミックスダウンにまで話は及び、より実践的な内容となりました。
講義後半は、Synthesizer Vを使用した学生達の自作曲を宮川先生が添削し、楽曲をより良くするためのアドバイスがなされました。
一人目は、作曲デザイン・コース 2年生の山下愛乃さん。
ピアノとストリングスに包み込まれるような壮大なバラード曲で、ボーカルにSynthesizer Vを使用。
宮川先生からは、「Synthesizer Vの打ち込みは、休符を意識するとより良くなる」との講評に加え、ストリングスについて「コードをまたいだり、オブリガードのように動かすことで叙情性が増し、よりドラマチックなアレンジになる」とのアドバイスがありました。
二人目は、ミュージッククリエーション専攻 2年生の森山和哉さん。
森山さんの楽曲は、軽快なピアノバッキングが印象的なダンスビートのナンバーです。
宮川先生からは、「Synthesizer Vでは母音と子音のコントロールが重要。”がー”と伸ばしているノートについて、子音を伸ばすことで前の音との繋がりが良くなり、歌詞が聴き取りやすくより良いボーカルになる」と実演を交えて解説。
今回はエレクトロポップ調のアレンジということで、グルーヴの中心となるキック(バスドラム)の処理について、よりパンチのある音にするための手法がアドバイスされました。
三人目は、ミュージッククリエーション専攻 2年生の坂本柊弥さん。
多くの楽器が絡み合い、拍子も刻々と変化していく複雑なオーケストレーションの楽曲で、畳みかけるようなファンタジックな世界観に圧倒されました。
宮川先生は、「Synthesizer Vでスタッカートを表現する際には、歌詞の頭に『’(アポストロフィ)』を打つことで切れが良くなる」と、エディット画面を触りながら解説。
アレンジについては、「メロディと和音とがぶつかる箇所が数カ所あるため、和音を一部変更することで、さらに綺麗な響きになる」というアドバイスがありました。
本日参加された学生さん3名とも、とても高いクオリティで驚きました。特に山下さんや坂本さんのようなタイプの作品は自分に引き出しがありませんので、勉強になりました。音質、つまりミックスダウンについては、皆さん伸びしろがあると感じます。ともあれ、本日は多くの刺激を頂きました。自分もまだまだ頑張れそうです。
Synthesizer Vを核とした曲作りの実践について、かなり具体的な内容となった今回の講義。プロがDAW上でどのような処理を行っているのかを直接目にすることはあまりないだけに、参加者は大きな刺激を受けたのではないでしょうか。
そして、改めてSynthesizer Vの歌声合成ソフトとしての完成度の高さを目の当たりにし、DTMの未来に新たな可能性を感じる事ができました。
取材・文・写真:BUBBLE-B
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大阪音楽大学短期大学部 作曲デザイン・コース