2023年12月3日(日)開催
【開催日】
2023年12月3日(日)
午前:ミュージッククリエーション専攻の紹介
午後:トライアルレッスン(トークセッション)
【出演教員】
渡邊 崇 特任教授
(専攻・入試説明、Q&A)
金 慶來 助教
【出演ゲスト講師】
馬瀬みさき
(ミュージッククリエーション卒業生)
【出演学生】
高田かなで
(ミュージッククリエーション専攻 3年生)
※学年は出演時
ミュージッククリエーション専攻は、作曲の基礎的な所から始まり、DAWによる打ち込み、レコーディングやミックスダウンに至るまで、音楽を制作するために必要な技術を、現役の音楽家でもある講師陣から直接学べる専攻です。
今回のオープンキャンパスでは、渡邊崇特任教授によるミュージッククリエーション専攻の概要説明と、本学卒業生である馬瀬みさきさんをゲスト講師として招き、トークセッション形式のトライアルレッスン「プロフェッショナル研究」が催されました。
渡邊崇特任教授による、ミュージッククリエーション専攻の魅力から卒業生達の活躍、入試についての概要説明がありました。
ミュージッククリエーション専攻は、音楽の基礎に始まり、数多くの実戦的な実習を通じて、あらゆる音楽現場のニーズに応えられる「実力派」を輩出するため、幅の広さと深さの両方を備えたカリキュラムが特徴です。
また、レコーディングスタジオなどの恵まれた環境や、様々な楽器を専攻する他学部の学生達との交流も、100年の歴史を誇る音楽単科大学ならではの強みです。
講師陣は〝現役〟のクリエイター。だから、説得力が違います。
「20年後も実力派」。
これはミュージッククリエーション専攻が掲げる、卒業生の人物像です。
ここで学んで卒業することがゴールではなく、スタートに過ぎません。
変化の早いトレンドや複雑化していく社会、生成AIやブロックチェーンのように進化を続けるテクノロジーに対し、常に貪欲に向かい合う必要があります。
20年後も実力派であるために。
ミュージッククリエーション専攻が重要視しているのは、「考えるための基礎」です。
後半は、ミュージッククリエーション専攻の在校生と卒業生を交えた質疑応答タイムが設けられました。
高田かなで(ミュージッククリエーション専攻 3年生)
馬瀬みさき(ミュージッククリエーション卒業生)
※学年は出演時
─(渡邊)私はこの大学の作曲専攻を出て映画音楽の仕事をしていますが、現場に出て初めて知るようなことがとても多く、苦労しました。その頃の経験を元に、ミュージッククリエーションのカリキュラムを作りました。実際のところ、いかがですか?
馬瀬 依頼された仕事の納期までにどのようなペースで進めるか、何をしないといけないのか、といった具体的な部分がイメージできるようになりました。
高田 現役のプロの先生方が多いので、何か困ったことがあればすぐに聞けるし、制作にも活かせる点が良いと思ってます。また、第2キャンパスにあるスタジオが、課外活動でレコーディングに使えるのも大きな魅力です。
─(渡邊)レコーディングの経験は本当に大事です。録音技術だけでなく、生身の人間である奏者さんに、楽曲のニュアンスをちゃんと伝えられるか、というコミュニケーション力も問われます。
馬瀬さんはミュージッククリエーションの授業で、これが直接役に立っているというものはありますか?
馬瀬 ほとんど全て役に立っていますが、特にCM音楽について学ぶ「マーケティング・サウンド・コンポジション」は役に立っています。実際にCMの仕事をやった時、「これ、授業でやったやつだ!」と感じました。作業の流れやCM特有のルールについても本当にそのままでした。
─(渡邊)高田さんは、ミュージッククリエーション専攻の授業を3年受けて、印象に残っているものはありますか?
高田 やはり、1年次の時にあった、毎週違うジャンルの「歌モノ」の作曲をする授業です。最初は「こんなの絶対無理だ」と思っていたのですが、やってみるととても勉強になりました。何より公開添削なので、みんなの前で曲を流すじゃないですか。それで、みんなの曲が聴けることも勉強になりました。
─(渡邊) DTMでの作曲は、ここに入学する以前から行っていましたか?
馬瀬 いえ、ずっとピアノだけでしたので、DTMどころかパソコンすらほとんど触ったことがありませんでした。初めてMacBookを手にした時、どうやって開けるのか分からなかったくらいです(笑)
─(渡邊)プリキュアの楽曲仕事は在学中から携わっておられましたが、どのような経緯で?
馬瀬 いろんな作家事務所にデモ音源を送って営業をしていました。そして所属することができた作家事務所の先輩作家さんがプリキュアの仕事をされていて、挿入歌の仕事を紹介してもらったのが最初です。
─(渡邊)今はフリーになられていますが、事務所に入っていた時とフリーの今と、どちらが良いと思いますか?
馬瀬 事務所は作曲以外の様々な事務作業や仕事の段取りなどを行ってくれますが、フリーは全て自分でやらなければならないので、最初からいきなりフリーだと大変だと思います。経験を積むという意味で、最初に事務所に入って良かったなと思っています。
─(渡邊)学生時代、学校での勉強以外に取り組んでいたことはありますか?
馬瀬 自分の好きな曲を研究する、自分のルーツをちゃんと探る、ということを行っていました。そうすることで、自分の個性や強みが見えてくると思います。
─(渡邊)そのルーツとは、どんな音楽ですか?
馬瀬 親の影響でクラッシックやジャズを聴いてきましたが、自分が好きだったのはシンガーソングライターのさかいゆうさんです。さかいゆうさんのルーツがブラックミュージックだったので、自分もブラックミュージックにハマり、好きになりました。
でも、「どのジャンルの音楽が好き」というより、どのジャンルにも好きな曲があります。これは作家としても色んなタイプの曲を作りたいということに繫がっているのだろうな、と思います。
─(渡邊)自分が「好き」と思える曲って、どういう要素がある曲でしょうか?
馬瀬 まず、メロディが良いなと感じられる曲。そしてリズムとベースが気持ち良い曲が好きです。
─(渡邊)そういった「好き」が自分の個性や強みに繫がっていると感じますか?
馬瀬 最近やっと感じられるようになってきました。それまでずっと、自分の個性とは何ぞや……と思っていたので。
─(渡邊)自分の個性に気付くことは作家にとって大事だし、必須ですね。今日の参加者の皆さんで、好きなものについて教えてください。
参加者 私は子供の頃からドラムをやっていたので、曲を聴いた時に、リズムが最初に耳に入ってきます。だから気持ちの良いリズムが好きですね。
─(渡邊)良いグルーヴが好きというのは素晴らしいですね。作曲をする時にも役立つと思いますよ。
─(渡邊)それでは次の質問に行きます。ミュージッククリエーションの授業は、今の仕事に役立っていますか?
馬瀬 とても役に立っています。
─(渡邊)立っていないと言われたら、どうしようかと思いましたが(笑)
馬瀬さんの頃と今とでは一部のカリキュラムが違いますが、ずっとあるのが「ポピュラーソング・コンポジション」、つまり歌モノの作曲実習です。毎週1曲、違うジャンルの曲を作曲する課題が与えられるもので、ロックやレゲエ、演歌まで、ジャンルの幅が広いのが特徴ですが、どうでしたか?
馬瀬 最初は、自分の声が入った曲をみんなの前で再生するのに緊張していたのですが、そのうち慣れて、ためらいが無くなりました。
─(渡邊)1年次のうちは基礎を身に付けるために、とにかくたくさん作ってもらっています。
でも、「色々なジャンルの曲をたくさん作ることで個性が失われるんじゃないか?」という意見が学生から出たのですが、それはどう思いますか?
馬瀬 そんなことを気にしてる場合じゃない(笑) とにかく曲を作るしかないと思います。
─(渡邊)そして2年次からは「マーケティング・サウンド・コンポジション」というCM音楽の制作を模した授業、3年次からは「フィルム・スコアリング」という映画音楽を制作する授業が始まりますが、このあたりはどうでしたか?
馬瀬 フィルムスコアリングの授業は、まさに今の仕事に直結していると感じています。私は劇伴がやりたくて入学したので、習いたかったことを習うことができました。
─(渡邊)大阪音楽大学には、ミュージッククリエーション専攻が運営する「大音ラボ」という音楽のプロダクションがあります。ここで実際に制作に携わってみて、いかがでしたか?
馬瀬 発注から納品までの流れを、先生の指導のもとで一緒にさせてもらったのは、凄く勉強になりました。クライアントさんが何を求めていて、それにどう応えていくのか?が、意識できるようになりました。
─(渡邊)ここからは、質疑応答の時間です。質問のある方、挙手して下さい。
参加者 馬瀬さんの場合、1日に何曲書きますか?
─(渡邊)良い質問ですね!
馬瀬 最高で1日6曲です。
(一同驚き)
─(渡邊)でも、さすがに非常時ですよね。通常だったらどのくらいですか?
馬瀬 1日1曲か、時間をかけて2日に1曲ですね。
─(渡邊)良いペースですね。では次の質問をどうぞ。
参加者 プロになって初めて知ったことはありますか?
馬瀬 技術的な事は学校で学べたのですが、精神的な面などはいろいろありました。何より、プロの方々はどれだけ凄い方でも謙虚な方ばかりです。
あ、譜面の書き方で怒られたことがありました。
─(渡邊)譜面は手書きで書いていたのですか?
馬瀬 いえ、ソフトで作っていたのですが、「小節の幅が合ってないから見づらい」とか。劇伴って短時間にたくさんの曲を一気にレコーディングするので、自分の意図が奏者の皆さんに確実に伝わるように譜面を書かないとだめだと分かりました。
─(渡邊)そこまではミュージッククリエーションでもさすがに踏まえてなかったですね。それでは次の質問をどうぞ。
参加者 入学までにやった方がよいことはありますか?
馬瀬 私は「とにかく曲を作る習慣を作って下さい」と言われましたので、ピアノの前に座って毎日譜面を書いていました。
─(渡邊)すばらしい。曲は書いたら書いただけ上手くなるので、1日4小節でも8小節でも毎日書いた方が良いと思います。
では次の質問をどうぞ。
参加者 知識が無くてもやっていけますか?
─(渡邊)まず入試がありますので、そこをパスした時点でこちらが「やって行けるだろう」と判断したということです。でも、知識がたくさんある人の方が良い音楽を作る、ということでもありません。作曲とはそういうものだと思います。
それでは最後となりますが、次の質問をどうぞ。
参加者 入学をする前に身に付けた方が良いことはありますか?
馬瀬 曲を作る以外の癒しの方法というか、ストレス発散の方法を身に付けておいた方が良いと思います。
─(渡邊)割とハードな業界ですからね。自分が誠心誠意書いた曲を秒で否定されることもあるじゃないですか。そこからさらに上を行く曲を書いて戻すために、気持ちのリセットが必要ですよね。
馬瀬 私の場合はお笑いです。漫才を見るとかラジオを聞いたりしています。好きなコンビは中川家です(笑)
─(渡邊)ありがとうございました!
現場に直結する生々しいカリキュラムこそ、ミュージッククリエーション専攻の特徴です。
1期生として入学し、現在は作曲家として幅広く活躍する馬瀬さんのリアルな話は、今回のオープンキャンパスとトライアルレッスン参加者には響いたのではないでしょうか。
取材・文:BUBBLE-B