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第15回「HATORIメソッド」(羽鳥三実広⑤)


3月31日をもって大阪音楽大学の教授職を退任した。
退任するにあたり、ミュージカル・コースではこれまで「DAIONメソッド」と呼んでいたものを「HATORIメソッド」と改称し、今後も継承していくという。光栄の至りである。

●「HATORIメソッド」とは何か?
私の3千ステージを超える俳優としての出演経験と40年におよぶ俳優への指導経験により体系化された「ミュージカル俳優 育成システム」のことである。これをミュージカル・コースでは「実践教育プログラム」として、ヴォーカル、ダンス、演技の各実技教員が行う。

●「HATORIメソッド」で習得する技術 その主眼は?
歌唱、舞踊、演技の3技能において、自分が表現していることが観客に届く技術のことである。

●「HATORIメソッド」の基本練習、その概要は?
(1)歌唱→ リズムとメロディーをきちんとおさえると共に、歌うための身体を整え、伸びやかに声を前に出す(息を吐く)発声を行う。
(2)舞踊→ 楽曲をよく聴き、踊るための身体を整え、伸びやかに身体を使いこなす。
(3)演技→ まずまっすぐに立ち、次にしなやか且つきちんと歩ける身体を整える。併せて伸びやかに声を前に出す発声を身につけ、明晰な台詞を言う。

以上は、一言で言えば「表現するための身体と声を作り、鍛えること」となる。

●「HATORIメソッド」で表現へ
上述の基本を徹底的に反復練習すると共に、真似事や形だけではない「自分の心」を使った表現を、学生らは歌唱、舞踊、演技の3技能において探求する。この「自分の心を使う」技能が「HATORIメソッド」の核であり、教員は学生ひとり一人に合わせたきめ細かい指導で「HATORIメソッド」の習得をサポートする。
2年間におけるこの濃密な学びが、卒業後にパフォーマンスの世界に進んだ際、求められる表現の要求に応える力となるのである。

さらに言えば、「HATORIメソッド」の学びで身につけるスキルは、パフォーマンスの世界だけでなく一般社会でも通用する。すなわち「礼儀」、「気配り」、「想像力」、「発想力」、「発信力」、「実行力」が身につくのである。
一般就職している卒業生らが「ミュージカル・コースの2年間の学びが役に立っている」と口をそろえて言ってくれるのは、嬉しい限りである。

2025年度。ミュージカル・コースでは「HATORIメソッド」を継承した教員らによる学生への指導が始まった。
学生らにとって「より良き学び」のスタートである!

羽鳥三実広(名誉教授)

慶応義塾大学商学部卒。脚本家・作詞家・演出家。劇団四季出身。学生時代より27年間に亘る同劇団在籍中、俳優として3000回以上の舞台に立ち、同時に演出助手、脚本執筆、演技教師も兼務。作品作りに参加すると共に多くのメインキャストを育てる。「ミュージカル異国の丘」は故・浅利慶太氏との共著。四季退団後の2004年、「シアタープロジェクト羽鳥」設立。「羽鳥塾」での俳優育成と共に創作活動を開始。「YAKUMO」「夜物語」「孤児マリア」等の作品がある。2011年より本学教授に就任。「大阪から全国へオリジナル・ミュージカルを発信する!」を目標に掲げ、毎年オリジナル作品の創作上演を行うと共に、ミュージカルによる教育的見地からの社会貢献を生涯の仕事と定めている。
他にユニバーサル・スタジオ・ジャパンでの演技指導と演出協力(2006~2016年)やTBS新人アナウンサーのボイストレーニング(2006年~2019年)、全国各地での講演やワークショップなど、精力的に活動中。

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