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第9回「不公平はないが、不平等はある」(羽鳥三実広③)


新作台本による授業(稽古)が行われている。この創作現場にMuコースの学生は不公平なく全員が俳優として参加し、年度末には誰一人欠けることなく出演もする。この「不公平なし」が大原則。
しかし配役(キャスティング)は「不平等」だ。学生らが皆「自分の望む役」につくことはない。それぞれの技術に見合った配役をすることが原則で、学生らの伸びしろも考慮した上、我々教員が決める。だが、この決められた配役は稽古における進捗状況で度々変更される。その間(かん)、学生による自薦、他薦はない。ソロを歌える学生、台詞が得意な学生、踊りの優れた学生、そしてそこまでの技術にはまだ到達し得ていない学生、それぞれがその時々相応の役に配されるのだ。

傍(はた)から見れば「いい役」「悪い役」(主役、脇役、その他大勢等々)があるのは理解できる。しかし我々の側から見れば、本来そんなものはない。舞台上には様々な人物が登場し、それぞれに役割があり、皆「生きている」。どんな役であれ、俳優は舞台上で「生きる」のが仕事なのである。

自分に与えられた役を、全力を尽くしてトライすることで見えてくる「自分」や「他人」。それがMuコースの学びだ。いずれ社会人として世に出れば必要なことである。

羽鳥三実広(特別教授)

慶応義塾大学商学部卒。脚本家・作詞家・演出家。劇団四季出身。学生時代より27年間に亘る同劇団在籍中、俳優として3000回以上の舞台に立ち、同時に演出助手、脚本執筆、演技教師も兼務。作品作りに参加すると共に多くのメインキャストを育てる。「ミュージカル異国の丘」は故・浅利慶太氏との共著。四季退団後の2004年、「シアタープロジェクト羽鳥」設立。「羽鳥塾」での俳優育成と共に創作活動を開始。「YAKUMO」「夜物語」「孤児マリア」等の作品がある。2011年より本学教授に就任。「大阪から全国へオリジナル・ミュージカルを発信する!」を目標に掲げ、毎年オリジナル作品の創作上演を行うと共に、ミュージカルによる教育的見地からの社会貢献を生涯の仕事と定めている。
他にユニバーサル・スタジオ・ジャパンでの演技指導と演出協力(2006~2016年)やTBS新人アナウンサーのボイストレーニング(2006年~2019年)、全国各地での講演やワークショップなど、精力的に活動中。

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