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第7回 「台詞(せりふ)」


台本(右綴じの縦書き)を開く。上に登場人物の名前、その下に台詞が書かれている。

設問①:台詞には登場人物の何が書かれているのか?
設問②:俳優とは何をする人か?

②から考える。英語で俳優のことを「アクター(ACTER)」という。女性形は「アクトレス (ACTRESS)」だ。
元になる「ACT」の意味を英語辞書で調べると、動詞が「行動する」、名詞が「行動」。つまり俳優とは「行動する人」となる。俳優は舞台の上で「行動する人」のことなのである。

書かれている台詞から、自分が演じる登場人物の「行動」を読み解く。これが俳優の仕事の第一歩。「何をしているか」を読み解くのである。大事なことは「動詞」で考えること。
と、ここまでは大抵の演技書で書かれている。

例を出す。「A」という登場人物が、この原稿の内容を学生らに語っているシーンがあったとしよう。演じるのは俳優のBさん。Bさんは考える。登場人物「A」は何をしているのか? →「演技について語っている」「台詞とは何か?の講義を行っている」等々の読み解きを行うだろう。
だから登場人物「A」を演じることになった俳優Bさんは、Bさん自身が「演技について語る」あるいは「台詞の講義を行う」という行為を行えばいいのである。くどいが「Bさん自身が」である。「演技について語る」風なお芝居をするのでもなく、「台詞の講義を行う」真似事を行うのでもない(→描写の演技)。それらしい形の演技をするのではなく、Bさん自身が「自分の感覚」を使って本当にその行為を行うのである(→生きる演技)

しかしながら、これでBさんの表現が出来たわけではない。出来たのは台詞が内包する行動だけ。表現に最も必要なものが抜けている。「想い」である。この原稿の内容を語っている登場人物Aの「想い」。これを台本から読み解き、その想いをBさん自身のものとして表現されなければならない。

台詞から「行動」を読み解くことは、表現にとって「必要条件」である。しかし決して「十分条件」ではない。「想い」にまで至らなくては表現にはならない。
ともあれ、通常、台本には台詞とト書きしか書かれていない。その台詞から想像力を駆使して「行動」だけでなく「想い」も読み解いていくのである。そしてその「想いを客席に届ける」には、今度は「発声」「物言い」等々の技術も必要になる。

――真に演技は難しい――