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第4回 「想像力①」


 「自分が演じる登場人物の役作りをする」。これが俳優の仕事の第一歩。
 台本に書かれている台詞やト書きを元に、登場人物のことはもちろん、作品に関する情報を集めていかなければならない。「こんな性格だろうか?」「この時、どんなことを考えているんだろう?」「ここは彼にとってどんな場所なんだろう?」等々、台本に書かれていないことを読み解いていかなければならないのだ。

 そういった情報集めに発揮するのが「想像力」。そしてその想像力の源(みなもと)になるのが本人の「体験」と「追体験」である。
 「体験」とは本人がそれまで直接に経験してきたこと。しかしながらひとりの人間の人生において、その体験には限りがある。また作品によっては自分の経験などまったく役にたたない。その時に必要なのが「追体験」。追体験とは「読書」「映画」「テレビ」「音楽」「美術」等々から触れることのできる情報のことである。人間の感情や行動、社会における経済や政治の仕組み、国の成り立ち、国民性、戦争、平和、生と死、恋愛や失恋、憎しみ、嫉妬、これら挙げればキリがない情報を追体験しておき、「心の貯金箱」にしまっておく。そして時が来たら、役作りに生かすため「心の貯金箱」から必要なものを取り出す。これが想像力である。
 様々なものに目を向け積極的に追体験を行う能力と、いつの日かそれらを取り出す能力。俳優は常日頃からそれらを磨いておかなければならない。「引き出しを増やしておく」という言葉でも言い換えることができる。
 「想像力」とは「体験」と「追体験」の集積と言っていい。