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〈レポート〉2024年度ポピュラー・ミュージック・コンサート


アンコール曲「River Deep, Mountain High」のシーン

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レポート

2025年2月15日(土)、ザ・カレッジ・オペラハウスにて「2024年度 大阪音楽大学・大阪音楽大学短期大学部 ポピュラー・ミュージック・コンサート」が開催されました。ポピュラーエンターテインメント専攻/コースの学生たちが、これまで身につけた力を発表する渾身のステージです。3時間近くにも及ぶ熱演に会場全体が魅了され、愛あふれる一体感に包まれました。

大阪が誇る高校軽音楽部による、若さみなぎるオープニングアクト

16時の開演を前に、早くも熱気に包まれている満席の場内。オープニングアクトを務めるのは、大阪府内にある3つの高校が誇る軽音楽部のメンバーです。

大阪府立桜塚高等学校

まずは大阪府立桜塚高等学校が、パーティーソング「Celebration」を披露。アメリカのファンクバンド、Kool & The Gangが1980年にリリースし、グラミーの殿堂入りを果たした名曲です。軽快なステップを踏むボーカルやホーン隊に合わせ、会場からも手拍子が鳴り響く、元気いっぱいの幕開けとなりました。堂々とした歌声を響かせてくれたボーカルの井上琥太郎さんに感想を訊ねると、「力強くやろうと意気込み、楽しかった」と晴れやかな表情。

(写真右より)司会進行のサワムラエイト講師と野田輪太郎さん(ヴォーカルパフォーマンス・コース3年)

大阪府立金剛高等学校

続いては大阪府立金剛高等学校です。1960年代、アメリカン・ロックの黄金時代に活動したJefferson Airplaneの大ヒット曲「あなただけを(Somebody to Love)」を、パンチの利いたハスキーなボーカルと骨太なサウンドで届けます。ボーカルの南宅芽依さんによれば、音を途切れさせずに演奏させるのに苦労したようですが、サイケデリックな世界観が見事に表現されていました。

阪南大学高等学校

ラストは阪南大学高等学校による、緑黄色社会の大人気曲「Shout Baby」。息の合ったグルーヴに抑揚あるボーカルが重なり、どんどん引き込まれます。「ストーリー性がある曲なので、変わり目は本のページをめくるイメージで演奏するなど工夫した」と、ボーカルの小林光希さん。人生における「変わりたい」という思いが胸に刺さるパフォーマンスで、コンサートの序盤を盛り上げてくれました。

さまざまな角度からの“愛”をテーマにした、心あたたまるステージ

シンガーソングライティング 選抜アクト①

2部構成で行われる本編、まずはそれぞれ〈シンガーソングライティング選抜アクト〉からのスタートです。共通のテーマ“私信”をもとに、シンガーソングライティング・コース/クラスの授業で制作された楽曲を厳選。最初に披露された、大学2年の唐澤結愛さんによる「ハッピーロード」は、大学で出会った大好きな友だちに向けた曲なのだそう。「彼女のまとうハッピーオーラを表現するため、みんなで歌えるハッピーソングをつくった」という言葉通り、終盤には全員でラーラーラーと大合唱して楽しい気分に。

教員プロデュースの第1部ステージ

Charlie Puth「Up All Night」のシーン

そしていよいよ始まった第1部は、ポピュラーエンターテインメント専攻/コースの選抜メンバーによる、濵﨑州平准教授プロデュースのステージです。「皆さん最後まで一緒に盛り上がっていきましょう!Clap Your Hands!」のかけ声とともに手拍子が起こり、日本屈指のディーヴァ、MISIAの「Hello Love」で幕開け。愛の力と希望を歌うポップな楽曲がさわやかに表現され、聴くだけで前向きな気持ちになっていきます。そこからパワフルに一転、アメリカのR&Bアーティスト、Beyoncéの「Love On Top」に。愛する人と一緒にいる喜びを歌う、ポジティブなエネルギーに満ちたラブソングです。ハーモニーが心地よく重なる瞬間が、愛の素晴らしさを強調。大人の雰囲気漂うハイトーンボーカルが気持ちよく伝えてくれました。

そして再び、MISIAの「つつみ込むように…」へ。1998年に発売されたデビューシングルで、繊細なメロディと心に寄り添う歌詞が、あたたかな安心感で包み込んでくれます。声質の違うボーカルが入れ替わり歌い上げ、ハモった瞬間はもう鳥肌もの。泣きのギターソロにも痺れます。

続いては「眠れない夜を過ごすあなたに捧げる曲」と紹介された、Charlie Puth「Up All Night」。世界的な人気を誇るシンガーソングライターが、2016年にリリースした「徹夜」を意味する楽曲で、“君”の放った言葉に翻弄される主人公の心情を表しています。切なくて優しい男性ボーカルが、豊かな女性ボーカルと響き合う融合感がたまりません。

5曲目に入ると、雰囲気が軽やかに一変。キング・オブ・ポップ、Michael Jacksonの死後、2014年にリリースされた「Love Never Felt So Good」が奏でられます。1983年に録音され、31年もの間眠っていた未発表曲。醸される愛の喜びや幸福感から、彼の音楽もつ永遠の力を感じます。女性ボーカルはビターに、男性ボーカルはクリアに掛け合い、とてもきらびやか。ベースソロとドラムソロの応酬には、客席から思わず歓声が!

そのままOle Børudの「Backyard Party」へ。ファンクとソウルのエッセンスが取り入れられた陽気で軽快なサウンド、リズミカルな歌声に、思わず体が動きます。「特別なことはなくても、一緒に過ごす時間が大切」だと語りかけてくる、心地よいパーティーチューンで、ステージと客席がお互い口ずさむ掛け合いも楽しめました。

堀内蓮太郎さん

続く楽曲は大学4年、ギターの堀内蓮太郎さんによる卒業制作「Light Bulb」です。新たなスタートを切るにあたり、未来への不安と希望を“電球”で表現したというインスト。明と暗、まさに対照的なイメージが音に表れ、頭の中のスイッチを切り替えられているかのようです。

そこからSuperflyの「Farewell」へ。「別れ」を意味するタイトルの本作には、単なる「さようなら」ではなく「新しい始まり」という前向きなメッセージが込められ、その歌声もゆったりと胸に沁みてきます。美しいコーラスが希望を示し、転調部分では荘厳な扉が開けるような情景が目に浮かぶ。新たなステージへと向かう気持ちを後押ししてくれます。

そして第1部ラストとなる9曲目は、イギリスの音楽グループ、The Brand New Heaviesの「You Are the Universe」。ファンク・ソウル・ジャズの融合で、「私たちすべてが宇宙の一部であり、互いに深くつながっている」というメッセージを伝えます。ステージに合わせて客席も手を振り、手拍子をする一体感。グルーヴを感じて揺れながら、前へ上へと突き進む感覚に満たされ、大きな拍手で締めくくられました。

キラキラと光り輝く“Sparkling”なステージで、会場が一体に!

シンガーソングライティング 選抜アクト②

第2部へと導く〈シンガーソングライティング選抜アクト〉は、大学1年の吉山咲羽さん。憧れのシンガーソングライターに向けて作られた楽曲「憧憬に縋る」を、クラスメートの上野可奈恵さんによるピアノ演奏で披露。 あふれる思いを伝えたいものの、好き過ぎるがゆえにむしろ会いたくないという思いの強さ。「あたしの歌姫」で筆を置く歌詞に、胸が締めつけられます。

ゴスペル中心の第2部ステージ

The Brooklyn Tabernacle Choir「I'll sing of your love」のシーン

そして始まった第2部では、ポピュラーエンターテインメント専攻/コースの学生たちが大集結!“Sparkling”をテーマにした、中田幾子教授プロデュースによるゴスペル中心のステージです。壮大な音楽と大自然を駆け抜ける映像をバックに、「私たちの生みだす輝く世界へ、皆さまをお連れします。Sparkling!」といざなわれると、1曲目、Carly Simon「Let the River Run」のインストバージョンへ。ミラーボールが光を放つなか、80sを思わせるスペイシーなギターとシンセがたまりません。

そこから会場全体を手拍子で巻き込み、グラミー賞最優秀ゴスペル・クワイア賞を獲得したアメリカのゴスペルグループ、The Brooklyn Tabernacle Choirの「I'll Sing of Your Love」がスタート。希望にあふれた歌声が、輝かしい愛の賛歌となって伸びやかに響き、終わると早速、客席から歓声が湧き起こります。

続いては、Yolanda Adamsの「Victory」。2005年公開のドキュメンタリー映画「The Gospel」に登場する楽曲で、神への信仰で自分の勝利を信じる気持ちを取り戻した様を、熱いメロディと歌詞で表現しています。切実な声色とスウィングが脈動し、ラストはこぶしを掲げて勝利を体感!

さらに「皆さん、盛り上がっていますか!」の呼びかけにあおられ、Byron Cageのゴスペルメドレー「The Glory Song」へ。聴いているだけで力がわいてくる音楽に、心が燃え上がるようです。ホーンセクションやパワフルなボーカルなど、モダンと伝統が融合。観客も「ハレルヤ」という歌詞にノり、歓声が上がります。曲中、前に出てきたメンバーが繰り広げたキレッキレのロックダンスで、テンションは最高潮に!

その盛り上がりのまま、続く5曲目もダンスナンバーです。3~4年生が授業内で2グループに分かれ、それぞれで振り付けや構成を考え、コンサート用に再構成したというGloria Estefan & Miami Sound Machineの「Conga」。1980年代のポップとラテン音楽の融合を象徴した心揺さぶる音楽で、座って観ているのがもどかしいほど。中盤のピアノソロやペアでのサルサダンスに、客席も興奮を抑えきれず、もう歓声が当たり前となっています。

ゴスペルバージョン「翼をください」のシーン

その後は、合唱曲としても有名な「翼をください」を、ゴスペルバージョンで展開。この3月に卒業し、それぞれの人生を歩んでいく学生たちをはじめ、みんなが魂を込めて歌っているのが伝わります。英語の歌詞で歌われた2番のあとは、「ぜひ一緒に歌ってください」という呼びかけのもと、観客も含めて大合唱。会場の両脇からも学生たちが現れ、手拍子とアカペラと一体となる時間はかけがえがなく、音楽の力と全員の心が重なり合うのを感じました。

ラストの曲だと告げられたのは、冒頭にインストで披露されたCarly Simonの「Let the River Run」。映画「ワーキング・ガール」の主題歌で、アカデミー賞の主題歌賞を受賞し、TBS系ドラマ 「HOTEL」の主題歌としてもカバーされたおなじみのナンバーです。始まりのパーカッションが原始の力を思わせ、自然との一体感を夢想。後半ではボーカルとボディーパーカッションのパフォーマンスも混じり合い、悠々と流れる川のように突き進む…そんな人々を応援する楽曲が余韻を残します。

Carly Simon「Let the River Run」のシーン

アンコール

鳴りやまない拍手のなかで登場したのは、このステージを仕掛けた中田幾子教授。これから始まるアンコールを告げると、再び会場からは大きな拍手と歓声が。演奏の前に、同専攻/コースの発展に多大な貢献をされ、2024年度末で定年を迎える福榮宏之教授、森島裕子講師のセレモニーを開催。これまでの思い出を語り、挨拶をされたところで、お2人に学んだ卒業生たちがサプライズでステージへ!感謝の気持ちを伝えたいと駆けつけてくれました。

そしてここから、ベーシスト・福榮宏之によるスペシャルステージに。フュージョンの名手ここにあり、といったパフォーマンスに痺れるような快感を覚えます。緩急織り交ぜた演奏をバックも盛り立て、熱気あふれる歓声が響きました。続いては教員たちがリードボーカルを務める「Lean On Me」。アメリカのゴスペル歌手、Kirk Franklinがリリースしたこの曲名は、「私に寄りかかっていいよ」という象徴的な意味。くじけそうな人に手を差し伸べてくれるような、希望の光を感じるとりどりの歌声がきらめきます。

いよいよ最後、9曲目を飾ったのは「River Deep, Mountain High」。アメリカの天才プロデューサー、Phillip Spectorが1966年に発表した渾身作で、「河より深く、山より高く」という曲名からも、その愛の大きさが伝わってきます。ラストを飾るのにふさわしい、華やかで爽やかなソウルミュージックで、心が晴れやかに高揚。自然と愛を讃える気持ちが体中に染みわたります。手拍子と歓声と口笛、そして割れんばかりの拍手が巻き起こり、いきいきと光り輝くコンサートが幕を閉じました。

※学年等は2024年度時点のものです。
Text / 三浦彩
Photo /(有)サンクスリソース