〈レポート〉ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団 第63回定期演奏会
【第1部】モーツァルト/オペラ「劇場支配人」より 序曲、アリア、重唱
モーツァルトの「劇場支配人」の序曲は華やか。牧村邦彦氏(ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団正指揮者)のタクトで、粒のそろった演奏を響かせるオーケストラ。フルートが軽妙な旋律を奏でます。
プリマドンナ役を競う2人の女性=マダム・ヘルツ(端山梨奈)とマドモアゼル・シルバークラング(村岡瞳)の美声と、場を取りなす歌手ムッシュー・フォーゲルザンク(中川正崇)のテノールが、2重唱、3重唱に膨らみます。
声を転がすように歌うコロラトゥーラを披露すれば拍手が起こり、聴衆はそれぞれの歌声に引き込まれました。バス(湯浅貴斗)も加わったフィナーレでは、4人それぞれの個性が見事なハーモニーへと変わりました。
写真左からムッシュー・フォーゲルザンク(中川正崇)、マダム・ヘルツ(端山梨奈)、マドモアゼル・シルバークラング(村岡瞳)、ブッフ(湯浅貴斗)
【第2部】Concert’Opera
サリエリ/オペラ「はじめに音楽、それから言葉」
サリエリの「はじめに音楽、それから言葉」(原語ノーカット上演・関西初演)。序盤はマエストロ(湯浅貴斗)と台本作家(仲田尋一)が怒りと嘆きを訴える、バリトンとバスによる迫力の重唱。両者が繰り広げるやりとりに、対照的な魅力を持つ2人のプリマドンナ・エレオノーラ(老田裕子)と新進気鋭の若手歌手トニーナ(村岡瞳)の掛け合いが加わり、オペラを作り上げる舞台裏が演じられました。
オーケストラの金管は共に歌い、弦楽器はピチカートも駆使しながら多彩な展開を表現。ラストはやはり、厚みのある4重唱。「歓喜の歌を観客席に」と歌い上げ、トランペットやティンパニーも華を添えて幕が閉じました。
写真左からマエストロ(湯浅貴斗)、台本作家(仲田尋一)、トニーナ(村岡瞳)、エレオノーラ(老田裕子)
出演は、本学出身の歌手たち。新国立劇場オペラ研修所やミラノ・スカラ座アカデミーで研さんを積むなど、オペラ界を盛り上げる面々が共演しました。演出は、井原広樹客員教授。久保田テツ准教授(ミュージックコミュニケーション専攻)の映像演出も加わり、現代的な感覚やオリジナリティーを織り交ぜ、コミカルながらも音楽の美しさを存分に味わえる舞台となりました。2作品を聴き比べた会場には、大きな充実感と心地よい余韻が広がりました。
Text/沖知美(高速オフセット)Photo/上田浩江