グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



  1. Home
  2.  >  News
  3.  >  〈レビュー〉大阪音楽大学 第67回 定期演奏会

〈レビュー〉大阪音楽大学 第67回 定期演奏会


\ Let's share! /

レビュー

大阪音楽大学第67回定期演奏会が2024年12月1日、ザ・シンフォニーホールで行われた。大阪音楽大学管弦楽団によるオーケストラの演奏会で、指揮をしたのが大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督を2018年以来、務めてきた尾高忠明。ソリストに大阪音楽大学特任准教授で、日本センチュリー交響楽団で首席チェロ奏者を務める北口大輔を迎えての開催だ。


ー P r o g r a m ー

J.ブラームス
大学祝典序曲 作品80

A.ドヴォルザーク
チェロ協奏曲 ロ短調 作品104(B.191)

J.ブラームス
交響曲 第2番 ニ長調 作品73

冒頭はブラームス《大学祝典序曲》。みずみずしい響きがピチピチとはじける様子が聴こえてきて、思わずニヤリ。学生を主体とするオーケストラならではのサウンドだ。たゆまぬ歩みで、はつらつとした演奏が心地よかった。

ドヴォルザーク《チェロ協奏曲》では、北口の独奏が圧巻の仕上がり。極めて正確かつ丁寧に音が奏でられ、途切れない歌がどの部分にもあった。それと歩みをともにしたオーケストラも好演で、第1楽章ではクラリネットとホルンが繊細かつ勇壮な表現を連ねた。トロンボーンの元気のよさも微笑ましかった。
第2楽章でもホルンのアンサンブルは十全に安定していて、磐石の仕上がりだ。独奏チェロとクラリネットによる愛のデュエットも美しい。北口が弾くカデンツァは慈しむようにあらわれた。末尾のデリケートなアンサンブルも見事だ。
第3楽章も高揚感を保ったまま進んだ。コンサートマスターのソロも艶やかに奏でられ、コーダで祈りのように光輝く箇所は、まるでブルックナーの交響曲の精妙な響きのように敬虔に浮かび上がった

ブラームス《交響曲第2番》では極めて自然な音楽の流れが構築された。音の厚みや張りも充分で、まろやかなサウンドが生まれる。
〈第1楽章〉では、ホルンを軸とするフレーズの受け渡しが自然で、それだからこそ音楽が流れる。再現部は美しく主題が帰ってきた。ホルンが果敢に攻めて、最後は静かに幕。〈第2楽章〉は厚みのある響きの連なりがあらわれ、木管楽器の精妙なアンサンブルを軸に極端に走らない中庸の美が形作られた。
〈第3楽章〉はオーボエの先導で。音楽の動きが変わってからも整然とリズムがはまるのが心地よい。主題がやさしい表情で戻って、オーボエの意志をもった演奏がアンサンブルを牽引する。〈第4楽章〉冒頭でやや集中力を欠いた感があったが、進むに連れて弦楽器がうねるように歌を奏で、それが木管楽器に引き継がれた。少々、疲れもありつつも、入り組んだリズムもなめらかにクリア。最後はコーダで頂点を築いて華々しく締めくくられた。

3曲ともに尾高の指揮のもと、オーケストラが凝縮して向かうところが揃った。奏者ひとり一人の充実が聴衆にも伝わった素敵な演奏だった。

Text / 小味渕彦之(音楽評論家)Photo / 飯島隆(飯島隆写真事務所)

Ⓒ樋川智昭

小味渕彦之(Hiroyuki Komibuchi)
1971年大阪生まれ。関西学院大学、および同大学院で音楽学を学ぶ。関西地方を中心に演奏会のために曲目解説を執筆するほか、「サマーミュージックフェスティバル大阪」、武満徹の合唱作品を中心とする演奏会など、コンサートのプロデュースも手がけている。「朝日新聞(大阪本社版)」などで演奏会の音楽評を担当。また、ステージマネージャーとして数多くの演奏会に携わってきた。1999年から2023年まで、住友生命いずみホールのステージマネージャーを務めた。2023年から豊中市立文化芸術センター総合館長。 関西学院大学、大阪芸術大学、武庫川女子大学非常勤講師、同志社女子大学嘱託講師。