〈レポート〉大阪音楽大学 第66回定期演奏会
ー P r o g r a m ー
芥川 也寸志/交響管弦楽のための音楽
A.アルチュニアン/トランペット協奏曲 変イ長調(トランペット:菊本和昭)
I.ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」
芥川 也寸志/交響管弦楽のための音楽
A.アルチュニアン/トランペット協奏曲 変イ長調(トランペット:菊本和昭)
I.ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」
幕開けは芥川也寸志の「交響管弦楽のための音楽」。耳なじみの良い旋律が、軽妙なリズムに乗って展開される2楽章構成の作品です。序盤から華のある音で、かつ清らかにメロディーを紡いでいくオーケストラ。中間部ではイングリッシュ・ホルンが叙情的な響きを印象づけ、呼応して各パートが奥行きを増していきます。
井上道義氏
第2楽章はシンバルの一撃を機に、トランペットやピッコロ、トロンボーン等が次々にエネルギッシュな演奏を展開。マエストロもステップを踏み、全休止の瞬間にはターンも交えてオケを盛り上げます。客席も体を揺らしながら芥川の世界に浸りました。フィナーレは奏者がそろって立ち上がるサプライズ! 1曲目から割れんばかりの拍手が送られました。
続くアルチュニアンの「トランペット協奏曲 変イ長調」は、本学の客員教授であり、NHK交響楽団首席トランペット奏者の菊本和昭さんを迎えて。チェロとコントラバスが刻むトレモロにのせ、トランペットの独奏が高らかに始まります。作曲者の故郷アルメニアの民俗的な旋律が、菊本氏のふくよかな音色で彩られました。オケはさっそうと指揮をとる井上氏と息を合わせ、ハープが彩りを加え、クラリネットが展開をリードして疾走していきます。
菊本和昭氏
菊本氏のスキルフルな独奏、力強い弦のユニゾンなど聴きどころが続き、中盤は哀愁に満ちた主題へ――。トランペットは弱音器を付け、弦の繊細な演奏、とりわけ低弦の美しい和声に促されて、静かに聴衆に語りかけました。ハイライトは朗々と吹奏されるトランペットのカデンツァ。伸びやかな音を会場に響かせ、ラストはオケのユニゾンを伴ってドラマチックに終結しました。
そして、ストラヴィンスキーの革命的作品、「春の祭典」。2セットのティンパニ、バストランペット、バス・クラリネット、コントラ・ファゴットなどを擁する分厚い編成で、大迫力の演奏に挑みました。
ファゴットによるリトアニア民謡的な旋律を皮切りに、複雑極まりないリズム、不意を突くアクセントなどで、多調の世界が彩られる本作品。マエストロは、オケに怒涛のような音を要求するかのごとく腕を振ります。ティンパニをはじめ、管・打のサウンドは特に刺激的で、大地を揺らすようなパワー、目に見えないものがうごめく様を伝えます。
大音量による激烈な展開から不気味な静けさまで、クライマックスに向けてその迫力は失われず。大太鼓のソロが最後の静寂を打ち破り、圧巻のフィナーレ。緊張感から解かれた観客からは、称賛がやみませんでした。
学生たちのみなぎるエネルギーが、マエストロの情熱とぶつかり合った類いないステージ。ホールを埋め尽くした人々にとって、記憶に残る一夜になりました。
Text / 沖知美(高速オフセット)Photo / 飯島写真事務所