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〈レポート〉大阪音楽大学 第65回定期演奏会


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レポート

2022年12月10日(土)ザ・シンフォニーホールにて「大阪音楽大学 第65回定期演奏会」が開催されました。大阪フィルハーモニー交響楽団の元音楽監督で、現在は桂冠指揮者の大植英次氏が指揮を務め、豪華なプログラムを披露しました。



ー P r o g r a m ー

L.バーンスタイン/「キャンディード」序曲

O.レスピーギ/交響詩「ローマの松」

C.オルフ/カルミナ・ブラーナ



最初に演奏されたのは、大植氏の師であるバーンスタインの「キャンディード」序曲。パワフルな金管楽器のファンファーレで勢いをつけると、大植氏の踊るような指揮のもと、軽快な音楽が続きます。作品の本編で歌われる二重唱やアリアの旋律で表情をコロコロと変えながら、曲はクライマックスへ。加速して一気に駆け抜け、演奏会の幕開けを華やかに彩りました。

大植英次氏


続いての交響詩「ローマの松」は、レスピーギの「ローマ三部作」の中で最も親しまれている作品で、4つの名所の松を通して、ローマの歴史と文化が描かれています。その一つひとつが色彩豊かな音色で紡がれ、会場にノスタルジックな雰囲気を誘いました。


第4曲「アッピア街道の松」では、2階客席の後方にトランペットとトロンボーンによるバンダが登場。ステージと客席からダイナミックに奏でられ、聴衆も音楽の中に取り込まれたような感覚に。客席側に振り返り、バンダに向かって指揮をする大植氏の姿も印象的に映りました。

*)オーケストラなどで、本来の舞台上の編成とは別に離れた位置で「別働隊」として演奏する小規模のアンサンブル


プログラムの最後を飾ったのは、オルフの大作「カルミナ・ブラーナ」。合唱を伴った全25曲からなる大作で、ソプラノ、テノール、バリトンの独唱も聴きどころです。本来ソリストはステージ上で待機していることが多いですが、今回は出番ごとに登場する演出がなされました。

曲のはじまり。“O Fortuna(おお運命の女神よ)”の劇的なフレーズで聴衆の意識を一気に引きつけると、音楽は高い熱量を保ったまま展開します。第1部「春」の第4曲では、バリトン・田中勉氏(教授)が深みのある柔らかな低音を聴かせます。

バリトン独唱の田中勉氏(本学教授)


第2部では舞台を酒場に移します。先ほどまでの陽気は立ち消え、バリトンの怒りに満ちた自問自答が繰り広げられると、次に全曲を通して唯一のテノール独唱へ。高橋淳氏が歌うのは、ローストチキンになりゆく白鳥の惨めさです。ステージに向かう不安定な足取りにも白鳥の悲痛な心情が表れ、魂の叫びが手に取るように感じられる歌唱に、観客は息を呑んで聴き入りました。

テノール独唱の高橋淳氏


第3部「愛の誘い」。ソプラノ独唱とバリトン独唱を軸に音楽が進行し、児童合唱団も加わった神聖なハーモニーが響き渡ります。


ステージ横の客席に並んだのは、ザ・カレッジ・オペラハウス少年少女合唱団と岸和田市少年少女合唱団。透き通るピュアな合唱で癒しを与え、歌詞に合わせた手振りも披露し、聴衆を驚かせました。ソプラノ・幸田浩子氏(特任准教授)の絹のようななめらかな歌声は心地よく染みわたり、バリトンとの愛の対話が前向きに展開されるにつれ、表情や声色もだんだん晴れやかに。部の終盤にはステージ上の全員で愛の喜びを高らかに歌い上げました。

ソプラノ独唱の幸田浩子氏(本学特任准教授)


音楽はそのまま上昇し幸福で満たされていきますが、最終曲ではそのすべてを打ち砕くかのように“O Fortuna”に回帰。オーケストラと合唱団が爆発的な音楽の渦をつくりだし、燃え上がるように完結しました。

苦しい状況に屈することなく音楽と真摯に向き合った学生たちには、声援にも勝る熱い拍手が贈られ、大植英次氏を初めて指揮に迎えての「第65回定期演奏会」は大盛況のうちに幕を下ろしました。

Photo / © 飯島隆