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連載【セルフプロデュース】楽器メーカー戦略企画室長が説く「他者との違いを価値化するプロセス」


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さまざまな視点
昨春本学でスタートしたのは、全国でもめずらしい「演奏領域におけるセルフプロデュース」を学べる特別講義。各界のトップランナーから、自分の表現をしっかりと周りの人に伝えていくためのノウハウを学んでいます。カシオ計算機株式会社 サウンドビジネスユニット グローバル戦略部 戦略企画室の室長・福原大毅さんを迎えた第7回のテーマは「個性を『強み』に変える考え方」です。

音楽を学ぶ環境に導かれ

福原大毅さん

時計や電子辞書、電卓、そして電子楽器でおなじみの大手メーカー、カシオ計算機で、キーボードなどの楽器関連製品の商品戦略企画などを担当する福原大毅さん。幼少期からバイオリン、中学時代はギター、そして高校時代は作曲・アレンジ、大学では電子音楽と映像音楽も学びました。

「勉強が面白いと思ったことは一度もなかった」という福原さんが、その面白さに目覚めたのはニュージーランドでの高校時代。さまざまな科目の中から音楽を選択し、「日本ではロックギターは勉強と思われないのに実技の専攻として認めてもらえたり、理論的な解釈なども教えてくれたり。ロックからどんどんジャズにのめりこんでいきました」と振り返ります。

飛び級で卒業し、日本で進学した大学でも興味の赴くままに音楽づけの生活を送ります。そこで出会ったゼミの先生の教えがその後の人生を決めました。「先生はプロの写真家で、クリエイターは作って終わりではなく、プロデューサーでもあると。専門分野がありながら、それしかできないのは駄目だと教わり、その教えが今でも生きています」

卒業後は楽器メーカーのローランドに就職し、楽器店等への営業、ギター関連製品の企画やマーケティングを担当しました。その後カシオに入社し、電子ピアノ「Privia」や「Casiotone」のブランディングに力を入れ、社長賞を受賞するなど実績を上げていきました。

「ニュージーランドに行っていなかったら音楽の仕事もしていなかったと思う」と振り返る福原さん

〝差別化戦略〟を考える

ブランディングに欠かせない、他メーカーとの差別化戦略について受講生にグループワークで学んでもらおうと、「Casiotone」の「CT-S1FH」モデルが一人一台準備されました。

受講生は実際に音を鳴らし、その弾き心地やサウンドを確認。「操作がしやすい」「柔らかいタッチがめっちゃいい」「デザインが好き」「いろんな種類のモードの切り替えがあっていい」「低い音も高い音も両方きれい」「デザインがハッピーな感じ」などの感想が聞こえました。

「CT-S1」シリーズは音楽を手軽に楽しみたいと思っている大人をターゲットに、日常生活との調和をテーマにしたミニマルデザインの電子キーボードです。コンパクトながら高音質で迫力あるサウンドが魅力の楽器で、「楽器店大賞2021 ポータブルキーボード部門」や「2021年度グッドデザイン賞」を受賞しています。

その中でも「CT-S1FH」モデルは、ブラジル出身の世界的ポップアーティストのロメロ・ブリット氏とコラボレーションしたデザインで、スピーカー部に色鮮やかなアートを施しています。

福原さんは「楽器にアートを掛け合わせることによって、ほかのキーボードにはない新しい価値を見いだしました。音楽から入ってアートが好きになるとか、その逆とか、いろんな切り口で音楽やアートを届けることができる点が他のキーボードにはない大きな強み」と説明します。

「CT-S1FH」モデルを触りながら、他楽器との違いを考える受講生

「違い」を「強み」に

人間誰しも得意なことも苦手なこともあるでしょう。福原さんは「苦手な部分を改善するより、得意な部分を伸ばしていく方がいい。それがその人ならではの個性となり、他者との違いになります」と言います。

そして他者との違い=「個性」を「強み」にできた自身の経験を紹介しました。

「楽器のスペックを覚えたり、機材の組み合わせなどを考えたりすることが昔から好きで、仕事でも苦になりませんでした。周りのみんながヒーヒー大変がっていることが苦にならず、それが評価されてお給料をもらえる。つまり『好き』が『強み』となり、それが『価値』に変わったのです」

ではその「強み」をどう作るか?「電子ピアノを新しく差別化するには?」と課題を設定し、「S:電子ピアノ市場をどのように分け」「T:どんな人をターゲットにし」「P:どのような価値を提供するのか」、グループワークで考える時間を設けました。

各グループからは、「ピアノを始めようと思っている3歳くらいの子が楽器を好きになるきっかけになるようなかわいいデザインで低価格のもの」「趣味で弾く人をターゲットに軽くてどこでも弾けてインテリアにしてもおしゃれに」「高齢者が挑戦しやすい仕様に」「気持ちが大きく動く思春期の中学生~高校生の精神状態をタッチから検出する機能を付けて」などの提案がされ、「楽器メーカーの社員はいつも議論して頭を悩ましています。皆さんから素晴らしい面白いアイデアが出てきて楽しかったです」と福原さん。

楽器を題材に、違いを強みにすることを考えてきましたが、〝人間〟でも同じことが言えます。「自分という人間をいかに売り出すか、いかに差別化するか」が「セルフプロデュース」の考え方であると説きます。

「大学でいろんなことを学ぶうちに、自分の個性が間違いなく見つかっていきます。社会に出てから、それが個性のままで終わるのか強みに変えていけるのかは皆さん次第。社会人の皆さんも戦う場所を変えるだけで、大きな強みが生まれる可能性があります。皆さんそれぞれに、思う存分活躍していってほしいと思います」

グループワークで使用した楽器は、受講生に1人1台プレゼントされました。
差別化の〝好例〟を通して、「他との違い」=「個性」を「強み」に変えて「価値化」するプロセスを学ぶことができました。