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連載【セルフプロデュース】一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(PTNA)の代表が大学院で学ぶ理由


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さまざまな視点

今春本学でスタートしたのは、全国でもめずらしい「演奏領域におけるセルフプロデュース」を学べる特別講義。各界のトップランナーから、自分の表現をしっかりと周りの人に伝えていくためのノウハウを学んでいます。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(PTNA)の代表で、昨年から慶應義塾大学大学院SDM研究科で学ぶ福田成康さんを迎えた第5回のテーマは「大人の学び直し~大学院に入学体験から~」です。
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――ここからは、講義のナビゲーターを務めた大阪音楽大学准教授の赤松林太郎さんとのアフタートーク。還暦直前の現役大学院生の福田さんの生きざまに、赤松さんが切り込みます。

還暦までに卒業目指して

福田成康さん(右)

赤松:講義では大学院に行かれて感じた、一番フレッシュな部分に触れてくださいました。

福田:日々感動しています。

赤松:福田さんは勇気があるというか、どちらかというと貪欲。だからこの歳になってもあまり躊躇せずリスタートされ、新しいもう一個の自分の人生に向かってすぐに飛び込んでいらっしゃいます。

ですが、本当は大学院に進みたいとか、専攻科に入りたいとか思っている人の大半が、ジェネレーションギャップもあるし…ついていけるかな…などと思っています。そういう人たちにもう一声いただければ。

福田:そもそも大学院に行こうと思ったのは、先程お話した通り大学を卒業した直後に、同級生の大半が行く大学院での2年間を、いつか使うぞという思いがありました。またそれとは別に、ピティナの会長を務めていた故・出井伸之さん(ソニー株式会社社長、同社会長兼最高経営責任者などを歴任)と毎月お会いする機会があり、すごい影響を受けました。

彼は若い人たちとよく付き合っていて、周りに年長者がいないし昔話を一切しない。若い人と付き合うのは案外難しいことで、彼らは年上の人とそんなに話したくないと思っている。だからって若い人と話さなかったら、昔話ばかりでお先真っ暗。いかに若い人と付き合うかっていうのが、今後の自分の人生を充実させることに直結すると出井さんを見て分かったんです。

若い人と付き合えたらいいなというのが半分と、若い人と付き合わないとただの爺さんになっちゃうという恐怖心が半分。どっちが勇気が要りますか、という(笑)若い人がまとまっているところに入る一番簡単な方法が、大学院に入学することだったんです。

赤松:なぜこのタイミングだったのですか?

福田:56歳の頃だったかな、大学の後輩と食事する機会があり、いつか大学院にという話をしたら、60歳前がいいですよと言われて。60歳までに修了するには58歳までに入らないといけない。

赤松:それで今なんですね。

福田:修士論文を語っている瞬間が59歳ギリギリという最後のタイミングでした。

利他的に生きれば生きるほど自分が幸せになる

福田成康さん

赤松:今日一つはっきり分かったことは、福田さんは利他的に生きるために、すごい利己的に生きているなと。利己的に生きている結果、利他的にふるまうんだなと分かりました。

福田:利他が利己になるんですよ。

赤松:なるほどね。

福田:利他こそが利己なんです。人間には動機が必要で、自分のためだけに生きるのと、自分プラス他人のために生きるのと、どっちが動機が深くなるか。動機が多ければそれだけ生きる幅が広がり、濃くなる。その濃さが幸せなので、動機が多い方が楽しい。利他的に生きれば生きるほど動機が増え、自分が幸せになる。そういう構造です。

赤松:60代に入ってからの夢は?

福田:新しい仕事をしたいです。これまで何万人という生徒を育ててきて、その人たちがどれくらい将来日本国にいい影響を与えるのかということに思いを馳せると、今の売り上げ以上に価値はもっと大きいなと。
 
そして学問関係で、新しい、自分にできることで最大のものを手掛けたいですね。大学院でシステムを学んで分かったのは、自分の人生をシステム化する時に、同じことずっとやっているだけではなく、別の仕事もしないと大きな仕事はできない。

ピティナで活躍できているのは、筑波大学時代、栗田工業時代があって、生物もやりコンピューターもやってきたから。この2つが組み合わさっているから、個人の中のシステムとしてできているから、それが付加価値となり、ショパンもドビュッシーも分からない状態で入った音楽業界で活躍できている。でもそれで30余年たっちゃった。1本の串刺し状態でやっているようで、それは良くない。

赤松:音楽大学はすごく構造的で、権力がヒエラルキーを作っていて、徒弟制度がある。もしご自身がそこにメスを入れるとしたら?

福田:結果が出るには20年はかかると思うんですが、確実に言えるのは、一般大学は〝知の開発〟、音楽大学は特にクラシックに関しては演奏を含めて〝知の伝承〟なんですよ。開発か伝承かという違いがあり、伝承であればあるほど、年上の人が有利になる。これだと組織が硬直化します。音楽大学でも伝承だけでなく、開発ができるようになれば。

赤松:それはとても興味深い話で、じっくりとお聞きしなければなりませんので、ぜひまた別の機会にどこかで続編をお願いいたします。

赤松林太郎准教授(左)と福田成康さん

Navigator&Interview / 赤松林太郎
Text / 齋藤架奈枝

福田成康(ふくだ・せいこう)
1964年生まれ。筑波大学生物学類卒業、栗田工業(株)で3年間勤務し、1989年4月から株式会社東音企画入社、1990年4月に同社代表取締役社長就任。1991年4月より🔗社団法人全日本ピアノ指導者協会の事務責任者として経営に関わり、現在は専務理事。1996年、日経BP社より情報システム大賞の準グランプリ受賞。2001年、第3回「フジタ未来経営賞」を受賞。2002年、財団法人商工総合研究所 中小企業懸賞論文 準賞受賞。2011年 文部科学省 社会教育功労者表彰受賞。公益財団法人福田靖子賞基金 理事長。「専務理事コラム」毎週更新中。