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連載【セルフプロデュース】現役アナウンサーに聞いてみた!「自己プロデュース」ってどうやるの?


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さまざまな視点
SNSを使えば誰でも自由に発信できる時代。“自分の存在”に目を留めてもらうには、戦略的にアピールしていくセルフプロデュースの視点が欠かせません。今春本学でスタートしたのは、全国でもめずらしい「演奏領域におけるセルフプロデュース」を学べる特別講義。今回、日本テレビ元アナウンサーで現在はフリーアナウンサーとして活躍される小倉淳さんを講師に、自らをプロデュースする第一歩「自己実現のための思考訓練」の様子をインタビューとあわせて公開します!

- Topics -

差別化と意外性でポジションを掴む

特別講義の様子

今回の特別講義には、演奏家を目指す学生から、音楽活動をしているクリエイター、一般企業にお勤めの社会人まで、幅広いメンバーが集まりました。冒頭で「社会活動においてポジションを獲得するために必要な要素は2つ。差別化と意外性」と小倉さん。

小倉淳さん

「誰かと自分を比べたときに“勝てないこと”は必ずある。他の人になくて自分にあるものを探す」「採用されるのは“一緒に仕事をしたい人”」と、ご自身の経歴や経験をユーモアも交えて紹介され、少し緊張気味だった受講者の皆さんもリラックスした雰囲気に!

当日のワークシート。企業の事業方針の明確化やマーケティング戦略に用いられる「SWOT分析」「4P4C分析」はアプローチ方法の整理にも役立つ

そして思考訓練の一環として、将来の自分の目標を設定し、それに対する自己分析や業界分析を行うためのワークシートが用意されました。

各自がシートに将来の目標を書き込み、まずは自分の強み・自分の弱み・業界における機会&脅威という4つの視点から自己分析と業界分析を行い、戦略を立てる際の土台作りを。そのあとは、自分のやりたいことを自分視点&顧客視点双方から検証していきました。この2つのステップにより、目標の実現に向けてどうアプローチしていくべきかを整理していきます。

受講者はそれぞれ目標と分析結果を発表し、企画プロデュースの業界で活躍する講師陣がその場でフィードバック。音楽業界だけでなく、異なる業界にいる人を想定した自己分析も一例として紹介されました。

スポーツ選手を目指す場合の分析例も
(写真中央/梶浦講師)

ワークシートをもとに自己分析を進める

講義の中では「特に伝統的な音楽を学ぶ場ではビジネスのことをタブー視する傾向があるが、社会の中で自分のやりたい事を成し遂げていくためには、そこから逃げてはいけない」というお話も。講師陣が提示する、実例を用いたアプローチや課題に対し、受講者の皆さんは真剣な様子で取り組みました。

小倉淳さん

特別講義の様子

今すぐセルフブランディングのスイッチをオンに!

――ここからはインタビューコーナー。講義のナビゲーターを務めた大阪音楽大学准教授の赤松林太郎さんが、小倉さんに今回の感想を踏まえてお話を伺いました。

赤松:小倉淳さんのセルフブランディングやマーケティング視点のお話に、受講生は大いに刺激を受けた様子でした。小倉さんは教壇に立たれていかがでしたか?

小倉淳さん

小倉:とても楽しかったです。社会人の方も何人かいらっしゃったので、学生さん向けというより少し枠を広げて話ができました。おそらく、大半の方はSWOT分析や4P4C分析はしたことがなかったのではないでしょうか。皆さんが一生懸命にワークシートを埋めている様子が印象的で、楽しそうにも見えました。セルフプロデュースに対して興味があることを感じられて、よかったです。今後、学生さん向けにフォーカスしてお話しさせていただくことができれば、皆さんの視野や将来の可能性がさらに広がるんじゃないでしょうか。

頭に浮かべるだけでも、意識と行動は変わる

赤松:音楽大学、特に演奏領域の学生にとっては、「セルフプロデュース」が日々の練習と同じくらい取り組む必要のあるものという意識が低いように感じられます。東京の大学でも客員教授をされている小倉さんから見て、本学の学生の雰囲気はどう感じられましたか。

赤松林太郎さん(左)と小倉淳さん(右)

小倉:今日は、1年生が来てくれたので「おっ」と思いました。これはどの大学も同じことで、1年生に就職の話をすると、「ええ~っ、まだ大学に入ったばっかりじゃん」って言われるんです。でも、実際は大学の4年間ってすごく短い。ちゃんとその危機感を持っている学生さんがいたので、「いいなあ」って思いましたね。

それと、音楽大学という特殊な環境の中で、卒業後のキャリアをどう描いていくかが鍵になりますね。進路として一般の学生とは違う道があると同時に、「一般の学生が持つ進路への思考」が向かない部分もある。そこに気づくのがこの講義であり、こうした機会は重要だと思います。練習漬けの日々の中で、ふとした瞬間に「そういえば私のセルフプロデュースって……」と頭に浮かべるだけでも、意識と行動が変わっていきます。自身の方向性を決める時に、どう一歩を踏み出すのか。今考えていることが、その時のよりよい選択につながることを知ってもらえたらいいなと思いました。

お金の話をすることはタブー?

赤松:音大の特殊性といえば、特にクラシック界ではお金の話をすることはタブーとされる風潮があります。教えを受けるには「門下に入る」というぐらいですから、学生には「先生に言われたことだけをやる」という意識が根付いているかもしれません。就職やビジネスにつながる話題は避けて、将来のキャリア設定は卒業してから考えるパターンが多いんです。在学中は卒業後のことを考えないように振る舞っているというか……(笑)。しかし、もうそうしたマインドだけで生きていける時代ではないので、このような企画を始動することで、学生に少しでも興味を持ってもらいたいと思っています。

小倉:従来、日本の学校教育自体が「お金の話を子どもにさせるな」という考えでしたから。ここ数年でやっと金融教育を始めましたよね。この間、私が出演しているBSよしもとの番組で、ゲストの大学生モデルさんに聞いたんですよ。「貯金してる?」と。そうしたら「貯金はしてません。でも投資はしてます」って言われてびっくりしました。

赤松:ちょっと予想外の答えですね(笑)。

小倉淳さん

小倉:その大学生モデルさんは経済学部に在籍しているそうですが。「投資って何やってるの?株?」って聞くと、「アメリカの投資信託とかをちょっとずつやっています」と。その子の友だちは、親から100万円渡されて「何でもいいから使ってごらん」と言われ、投資信託を始めたそうです。時代と共に、若い人たちが目を向ける先が変わってきたなと感じます。

家が”石油王級”の大富豪でもなければ、親元から独立して、しっかり仕事をして生活したいと思った時にお金は絶対必要じゃないですか。その「絶対必要」なところに目を向けずに来てしまったのであれば、今すぐそこを呼び起こすべきだと思います。こういう卒業後のキャリアを考えるための授業は、ますます重要になってくると思います。

価値をきちんとお金に換えることで、生き方が広がっていく

赤松:これからの時代、「音楽の道で生きていくとはどういうことなのか」、セルフプロデュースを含め、芸術家、アーティストとして「自分が商品になる」ことについて、教育を深めていくべきだと考えています。

小倉:もちろんお金のことをしっかり考えて、アーティスト、ミュージシャンの道に進む人もいますよね。でも、経済を中心とした日本の文化では、アーティストやミュージシャンが対価としてお金をしっかりと得られる環境ではありません。世界と比べても、アーティストが大事にされてないじゃないですか。しかしそれは、アーティストの皆さんが自分の価値をちゃんとお金に換えてないからという部分もあると思うんですよね。日本の音楽界の古い慣習の影響や、芸術をお金に換えることから目をそらしてきた歴史があるから。

赤松先生が、ご自身がアーティストでありながらこうした活動をされるのは、すごく大きな意味がありますよね。「お金を得ていいんだよ。その練習の対価と、技量の対価として得るべきなんだ」ということをちゃんと分かって、セルフプロデュースすることによって、次の世代がアーティスト、ミュージシャンや作曲家として生きる土壌がどんどん広げられていく。そのためにとても大きな一助になると思います。

赤松:ありがとうございます。これからもさまざまな視点でアドバイス、ご指導いただければと思います。

小倉:今日はとてもよい機会になりました。今後もぜひよろしくお願いします。
Navigator&Interview/赤松林太郎
Interview text/沖知美(高速オフセット)

小倉 淳
日本テレビ元アナウンサー(1981年~2006年)。1990年~1991年、BC英国国営放送にアナウンサー・翻訳者・プロデューサーとして出向。2002年、土屋敏男氏とともに汐留での大型イベント「GO SHIODOMEジャンボリー」総合プロデューサーを3年担当、「明日の神話」岡本太郎作品の野外展示で年間400万人の観光客を汐留へ動員。フリーアナウンサーとして、司会やナレーション等で活躍。江戸川大学メディア・コミュニケーション学部マス・コミュニケーション学科客員教授、日テレ学院講師も務める。
小倉さんが司会を務める、BSよしもと「ワシんとこ・ポスト」
(月曜~金曜19:00~21:00/2時間生放送)