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新連載【セルフプロデュース】女優・MEGUMIが業界で生き残るためにやっていること


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さまざまな視点

2023年度に特別講義として開講される「セルフプロデュース」。3月の「春のオープンキャンパス」ではキックオフイベントとして、女優のMEGUMIさんをゲストに迎えたトークセッションを行いました。MEGUMIさんが本格的にプロデューサー業を始めたきっかけや、自己発信することの大切さを、ご自身の経験を基にたっぷりお話ししてくださいました。

- Topics -

プロデュース業に力を入れるワケ


――MEGUMIさん、最近はプロデューサーとして随分お名前が出ていますよね?

はい。私たちの仕事って、何日にここに行ってこのセリフを言ってくださいっていう“受け身の仕事”なんですけど、第1回目のコロナのロックダウンの時に、このままではいけないなと。それで、インスタドラマをリモートで作ったんです。ブルーバックを購入して、自宅で誰にも会わずに撮影して。その体験が感激で忘れられなくて、そこからプロデュース業に力を入れていますね。

ロックダウン中に制作されたリモートドラマ
「CLUMSY JOURNEY」(全3話)

――最新作は、竹中直人さん監督、斎藤工さん主演で、ご自身はご出演&プロデューサーを?

零落』という作品なんですけれども、竹中さんと二人で飲んでいた時に、竹中さんが浅野いにお先生原作の『零落』というマンガを大事に持って、「これを映画化したいんだよ」っておっしゃって。あのようなレジェンドの方が目をキラキラさせて、新しいこととか、自分のフィールドとは違うことをやりたいとおっしゃる姿に感動して、当時はやったことなかったのに、お金集めます!って言っちゃったんですよね(笑)。そんな感じで、やったことはないけど心踊るものに飛び込んでみるというのが自分の掲げている目標で。そんなことを積み重ねているうちに芸能生活も20年になったり、プロデュース業という新しいもう一つの大きな自分の道が拓けていったりしたのかな、という感じですね。

――プロデュース業ってかっこいいんですけど、実際は下げたくもない頭を下げますよね…。

お金下さいって言うわけですからね(笑)。現場でも、例えばお弁当が来てないとか、スタイリストの子が逃げちゃったりとか、日々いろいろな問題があって、そういう細かいところをみんなで乗り越えていくっていう地味な作業だったりするかもしれませんね。

――女優としての仕事の場合は、そういうことってしなくていいと思うんですけど、そこにわざわざ自分の身を投じていくっていうのは、勇気も決断も、忍耐も必要ですよね?

そうですね。私、建築家の安藤忠雄先生が大好きで。安藤さんもご自身でお金を集めて図書館を建てられたりされていて、ああいう、70代80代でも新しいことに挑戦して前のめりに生きている先輩がすごく好きなんですよね。

MEGUMIさん

日本では役者が作品をプロデュースして、そこに自分も出演するっていうスタイルはなかなかないですけれども、アメリカで言うと、クリント・イーストウッドとか、『ノマドランド』のフランシス・マクドーマンドとか、やっている人がいますよね。さっきも言いましたけど、私たちって、仕事が来る時もあれば、来ない時もある。それって怖いんですよね。だけどTikTokで踊るわけにもいかないし、インスタで自撮りばっかり上げるわけにもいかないと。自己発信という意味で、今までの経験とお店のプロデュースで得たビジネス的なルールとか、そういうものをかけ合わせた時に、プロデュースをして、自分で仕事をつくっていく、ということに行きついたんです。今の日本の映画やドラマは、若い子がメインなんですよ。だから死ぬまでこの世界で生き続けるには、自分で作らないといけないんだということを、コロナの時に考えたんです。そこから自分で作品をつくろうと誓って、毎年毎年動いているような感じですね。

――すごいですね。自らマルチタスクを引きずりこんで、背負い込んで(笑)。

達成感を感じたい!みたいな。クランクアップの時の仲間とのエモーショナルなあの経験っていうのは、苦労を乗り越えた先にあることなので、やりたいんだと思いますね。

MEGUMIさんのセルフプロデュース


――女優さんって山ほどいらっしゃって、先ほど若い子中心の今の業界とお話しされましたけど、その中でちゃんと女優として生き抜いていくためにセルフプロデュースを常に持っていないといけない。そういう職業なんじゃないですか?

そうですね。私はグラビアタレントっていう形でデビューしたんですけど、当時は映画の世界って、グラビアタレントを出すわけにはいかないというか、それぞれのカテゴライズがもっとはっきりしていたんですね。今は、テレビドラマも映画も同じ人が出ていますけど、それすらも距離があるぐらいで。映画の方たちは映画の中だけでやっていくっていう感じで、全然今とは違ったんです。本当は映画に出たかったんですけど、そういうことを言っちゃいけないのかなってぐらい、自分の置かれている場所は距離の遠いところなんだっていうコンプレックスみたいなものがずっとありましたね。その後、出産を機にこれからのことを考える時間を持つことができて。でもやりたいことって一日二日では出てこないんですよね。私は日々、これからどうしていくんだと、自問自答を繰り返していました。当時の現実としては、ママタレントとしての仕事しかなくて、例えば、おうちの冷蔵庫を見せてくださいとか、ご主人の暴露をしてくださいとか。自分の向かいたい道と現実とのギャップが大きくて、“暗黒期”だったんです。もちろん家族は大好きなんですけど、仕事はやれることがないっていう感じの、つらい30代でした。だけどその時に、今後について一緒に考えてくれる先生に出会ったんです。お芝居の先生とか。自分がどういう人間で、どんな作品が好きで、こんな女優が好きで…って、書き出したり話したり、一つ一つアウトプットして気づくことに、一緒になってたっぷり時間を使ってくれたんですね。それで初めて気が付いたんです。自分は真ん中に立って可愛くにこにこしている役ではなくて、作品のちょっとしたエッセンスになったり、パンチが利いていたり、時には人を殺めてしまうけど心情があったり、そういう方向でいきたいんだと。だからセルフプロデュースって、時間をかけて自分が何者かを考えることがとても大事。そうしているうちに、自分の目指す方向性でのアプローチになっていって、だんだん社会がそれを認知してくれて。「こういう役はMEGUMIちゃんのものだよね」「MEGUMIちゃんにこれやってもらいたい」みたいになるまでには10年ぐらいかかりましたけど、やりたい方向性を具現化する努力を重ねれば、必ずどこかで誰かが見ていているので、道は拓けていくのではないかと、自分で経験して強く思っております。

――例えばマネジメントをしてくださる皆さんに、私こういう方向でやってみたいんだよねって発信したり伝えたり、口にしたりする努力もされていたんですよね?

今日この場がまさにそうですよね。これからこうなりたいですとかって口にするの、恥ずかしいじゃないですか。日本人って特徴的に、「君はもっとこうなんだからこうした方が良いよ」とか「できるわけないじゃない」とか、否定的なことを絶対に言うんですよ。そういうものだって、皆さんには思っておいてほしいんですけれども(笑)。でもアメリカとかヨーロッパとかって、「それ面白いね」って言ってくださるんですよ。日本の謎に否定してくる姿勢には負けそうになったりもしたんですけど、女優になりたいって何度も言っていました。

――勇気のいることですね。

リアクションも「えー!頑張ってねー!」って言いながら顔では全然思っていなかったり、「何言ってんの?ママタレでいいじゃん」みたいな。すごくつらいんですよ。最初の頃は、誰も自分の話を聞いてくれない時間が長いですから。でもそれって、進んでいるってことなんですよ。今日ここに皆さんが来ていることも、変わりたい、進みたいって思って行動した素晴らしい形だと思うし、それで結果がすぐに出るわけではないですけれど、それでもやりたいんだっていう熱量みたいなものはすごく大事だと思いますね。

MEGUMIさん

今は“自分計画書”っていうのを1年に1回必ず作っていて。何も決まっていないんですけど、例えば、1月~3月はTBSドラマとか、全然決まっていないけどとりあえず書いて(笑)。じゃあこれを叶えるために私たちは1年何をしていきますかと。お芝居のレッスンですね、ここに営業ですねって、やるべきことを明確化していくんです。余計な動きの中で生まれるいいこともあるんですけど、目標に向かってみんなの意思が統一されていくことはすごく大事。意思を表明したり周知させたりできるのは、やっぱり自分なんです。たとえ否定されても。否定されるってことは誰もやっていないことなのかなと前向きにとらえて、言ったり書いたり、みんなに伝えたりっていうのは、皆さんにもぜひやっていただきたいですね。そして長い人生をどう過ごしていくかっていうことを考えてわくわくする時間っていうのを、そして「腹を決める時間」をたっぷりと取っていただきたいです。

――腹を決める時間。

腹決めます。大変ですよ。

――言うからにはその裏で努力が要りますもんね。

そうなんです。私も、女優になりたいって言っているけど、誰よりも映画を観ているのかと言われればそうではなかったし、脚本の読み方も、どういう女優さんがどんなプロセスを踏んで今その場所にいるのかも、知らなかったんですね。そういう自分で目を背けたくなる部分も、目標を設定することで浮き彫りになってくるので、それを克服するための努力をする。そして技術も備える。どこに出ても恥ずかしくない自分を同時進行でやっていかないといけないので大変ですけど、やれば必ず道は拓けていくと思います。

とにかく発信を!


――MEGUMIさんは、女優としてはベテランの域じゃないですか。でもまだ足りないっていうものを持ってらっしゃる?

そうですね。韓国の作品が世界で大変なことになっていますよね。去年カンヌ国際映画祭とか釜山国際映画祭に行った時に、突きつけられちゃったんです。みんな韓国大好き。みんなが韓国韓国韓国って言うんです。すごいなと思うと同時に、日本人が持っている良さというものを伝える人があまりいないなと感じていて。日本は、この国だけで映画やドラマが成立していた背景があるからなのかなと。なので、これからの夢ですけど、自分の作った作品を、しっかりと海外に届けたいですね。評価されるようなものを一つでも二つでもつくっていけたらなというのは強く思っております。

――それはプロデューサーとして?

プロデュースもして、ちょっと出るみたいな(笑)。自分で作っていくっていうコンセプトが自分の中にありますので。プロデューサーとして自分で企画したもの、ご縁があって一緒にやろうよってお誘いいただいたものを世界中に届けるっていうのが、今の自分の中での大きな目標です。

――それは楽しみですね。ところで、ここ、大阪音楽大学って音楽に特化した大学なんですけど、音楽っていろいろなところで関わってきますよね?

いろいろな形がありますよね。TikTokやYouTubeのように、自分のオリジナルの音楽を世界中に発信するツールもありますし。うちの主人もミュージシャンですけど、見てるんですよ。世界中にどういう人がいるのかなーって。4歳でこんなにドラムが上手い子がいる!ってフォローしたりとか。とりあえずアクションを起こして世の中に出ていけば、必ずチャンスがありますから、発信してほしいですね。

MEGUMIさん

――MEGUMIさんは何かの発信をきっかけに声をかけたり、かけられたりってありますか?

発信していないと声もかけられないですよね。今の時代ってみんな大変で、自分のことに必死なんですよ。こんな企画があるけど誰か、ってなった時は、探す時間もなるべく短い方が良いって、プロデュースをやっていてもまさにそんな感じで。でもその方が表現している何かしらのアウトプットがないと出会えないんですよね。だから何でもいいので発信してほしい。

お店とかもよくキャンペーンをやっていますよね。あれも、元々何をやっているんだろうとか、それでも売れていないんだろうとか思っていたんですけど(笑)。私がお店をやっていることもあっていろいろな経営者の方とお話しして分かったのは、「動いている感」をいかに出すのが大事かということ。キャンペーンをやっている、プレゼントがもらえる、新しいコラボが始まったとか、ブランドが活性している感じ。それによって目撃する時間が増えますよね。そうすると、ロジックは違えど、いいブランドだよねとか、今流行っているよねという評価につながっていくらしいんですね。それは人間も同じ。私が美容本*を出せたのも、インスタで美容のことを突然発信し始めたからで。それまでは一切美容のイメージなんてなかったわけですよ。自分は内側ではめちゃくちゃ好きだしコツコツやっていたんですけど、誰も声かけてくれないなーって。それから、恥ずかしいけどインスタでの発信を始めたら、1年後ぐらいに出版社の方からお声かけいただけたんです。発信することってやっぱり難しいことではあるんですけれども、いろんな場所、ツールを使って、ぜひやりたいことを叫んでほしい。じゃないと何にもならない。この時代はスピーディーなので。

*)『キレイはこれでつくれます』(ダイヤモンド社)

MEGUMIさんがプロデュースを手掛ける「Caféたもん」の公式インスタグラムでは、メニュー紹介や金沢の魅力などを、ほぼ毎日発信している

――今日はMEGUMIさんの別の一面を拝見したような感じがしました。最後にメッセージをお願いできますか。

今日はいろいろなお話をさせていただきましたけれども、やっぱり一人ぼっちでは頑張れないですよね。私も、先生、マネージャー、撮影クルーとか、いろんな人とコミュニケーションを取ることで、よし!頑張ろう!って。そういう環境ってとても大切なんですよね。なので、こういう素晴らしい先生方がいらっしゃる大学で、自分ってどうなんだろうと話せるってものすごく幸せなことだと思います。一人でも頑張って、みんなでも頑張る。この両輪でやっていくと必ず道は拓けていくと思いますので、ぜひ頑張ってください。応援しております!今日はありがとうございました!

MEGUMIさん初の美容本が4月19日発売!


『キレイはこれでつくれます』(ダイヤモンド社)
10年間に渡るMEGUMIさんの“美容の旅”がついに書籍化!

「20代後半に一足先にほうれい線ができたりして一気に老け込んで、すごく焦りました。それから、いろいろなコスメや美容法を試して、その中で本当によかったものだけを集めた渾身の1冊です。ぜひ皆様、チェックしていただければうれしいです!」(MEGUMI)

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Interview(Event MC)/小倉淳


MEGUMI
岡山県倉敷市出身。2001年デビュー。持ち前のキャラクターを活かしテレビや雑誌などで活躍。その後、数多くの人気映画やドラマ、舞台へ出演し活躍の場を広げている。第62回ブルーリボン賞助演女優賞受賞(2020年)映画、「台風家族」、「ひとよ」、「事故物件 恐い間取り」、「AI崩壊」、「アイネクライネナハトムジーク」、「巫女っちゃけん。」、「孤狼の血」。ドラマ、NHK「伝説のお母さん」、EX「おっさんずラブ-inthesky-」、NTV「偽装不倫」、TBS「新しい王様」、YTV「黒い十人の女」。 WEBメディア『+collaborate』においてはジャンル・キャリアに関係なく自由にコラボを行う活動や、金沢市の中でも人気のスポットである「ひがし茶屋街」において“Caféたもん”のオーナー&プロデュースを行うなど、その活躍は多岐にわたる。近年では自らがプロデュースしたTVドラマ『GOSSIP BOX』(2021年)、『完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの』(2022年)も放映された。