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【羽鳥三実広】演劇経験ゼロから始まった芝居屋人生 立ち位置を自覚していたから、一歩ずつ前進できた


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仕事図鑑

尽きることのないアイデア、「書きたい」気持ち

僕自身は2023年の春で大阪音楽大学の定年を迎え、ミュージカル・コースの教育主任から特別教授に肩書が変わりました。

指導の最前線からは一歩引くことになりましたが「書きたい」「表現したい」という気持ちはまだまだ消えていません。日常生活の中でも本屋に行けばネタがないかという目で本を探すし、家の中でもアイデアをすぐ書き止められるように、あちこちにメモ用紙を置いています。電車に乗っている人の表情や話し方など、世の中のありとあらゆるものが作品のヒントに見えてくるのは、長年身に染み付いた観察眼、想像力によるものなんでしょうね。

われながら「俺は生涯芝居屋なんだな」とつくづく感じます。作家でも演劇人でもなく芝居屋。

昔、劇団四季が日比谷の日生劇場を拠点にしていた頃、サボっている劇団員を浅利さんが「天狗になるな。俺たちは日比谷の交差点にゴザを敷いて投げ銭をもらっている“芝居屋”なんだ」と戒めた言葉なんですけど、腹にストンと落ちたことが今でも印象に残っていて、ことあるごと口をついて出るんです。僕は職種や考えていることが会社勤めしている方たちと違うだけで、僕自身は作家とか演劇人とかそんなに偉そうなものではないんです。

演技にしても脚本にしても「自分は下手なんだ」から始まった芝居屋人生。僕より筆力がある人、演技がうまい人はたくさんいました。昔の仲間からは「よくお前が残れたな」と感心されます。自分の立ち位置を自覚していたからこそ、必死にもがきながら一歩ずつ前に進むことができました。

好きなこと、やりたいことを仕事として続ける幸せを感じながら、これからも湧き上がるテーマやアイデアを書き続けるだろうなと思います。

DAIONミュージカル第13回公演「空の向こうの物語」
〈公演日:2024年3月9日・10日・11日〉

天上界と地上界を舞台とするファンタジー作品。
2018年にも一度上演した作品ですが、今の学生にとっては初演ですし、台本を書き換えた部分も多いので、私たちも違う作品として向き合っています。

今回はいじめの話を切り口に、「自分の居場所を探す」がテーマになっています。「いじめ」を取り上げることの是非はスタッフ間でも賛否ありましたが、昔から続く問題。避けて通るのはやめようと。「いじめられてもこういう生き方がある」「生きていていいんだぞ」というメッセージを伝えたいと考えています。

この作品のナンバーはクラシック音楽をモチーフに歌詞を当てはめていることが特徴です。クラシック音楽を源流とする大音らしく、その魅力を知っていただくと同時にミュージカルにするとこうなるんだという新たな発見もしていただける作品となっています。ぜひお楽しみください。(羽鳥三実広)

Interview&Text / 野田直樹(高速オフセット)

羽鳥三実広(Michihiro Hatori)
慶応義塾大学商学部卒。脚本家・作詞家・演出家。劇団四季出身。学生時代より27年間に亘る同劇団在籍中、俳優として3000回以上の舞台に立ち、同時に演出助手、脚本執筆、演技教師も兼務。作品作りに参加すると共に多くのメインキャストを育てる。「ミュージカル異国の丘」は故・浅利慶太氏との共著。四季退団後の2004年、「シアタープロジェクト羽鳥」設立。「羽鳥塾」での俳優育成と共に創作活動を開始。「YAKUMO」「夜物語」「孤児マリア」等の作品がある。2011年より本学教授に就任。「大阪から全国へオリジナル・ミュージカルを発信する!」を目標に掲げ、毎年オリジナル作品の創作上演を行うと共に、ミュージカルによる教育的見地からの社会貢献を生涯の仕事と定めている。他にユニバーサル・スタジオ・ジャパンでの演技指導と演出協力(2006~2016年)やTBS新人アナウンサーのボイストレーニング(2006年~2019年)、全国各地での講演やワークショップなど、精力的に活動中。