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【RUNG HYANG×eill】アーティストたちの「これから」


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アーティスト

シンガーソングライターとしての活動のみならず多くのプロデュースも手掛け、様々なアーティストを輩出している「ルンヒャンゼミ」を主宰するRUNG HYANGさんと、映画・ドラマ・アニメの主題歌やCMに楽曲が次々起用され、各メディアで「若手注目のアーティスト」として続々ピックアップされているeillさんへのスペシャルインタビュー。今回は、シンガーソングライターとして生きる二人の人物像や音楽性にフォーカスしながら、今後の音楽シーンを見つめます。

<< 前編
「シンガーソングライター」という生き方

"ルール"の破壊から生まれる新たな音楽

ーーここからはeillさんも通っていたルンヒャンゼミでのエピソードから、それぞれの音楽性や今後についてお聞きします。まず、ルンヒャンゼミを始められたきっかけについて教えてください。

RUNG HYANG:専門学校の方から、「シンガーソングライターを育成する場所を作りたい」ということで依頼がありました。直接的な音楽のスキルもそうですが、物事を見る時の考え方や発想の仕方ーー例えば何かトラブルがあったり、生活の中で苦しいことがあったとしても、楽曲に落とし込むことでちょっと浄化されたり、どこかでラッキーだと思えるようになるという<思考の癖づけ>も大切にしながら、自分自身も一緒に学んできました。

ーーeillさんのどういうところに光るものを感じましたか?

RUNG HYANG:歌は昔からめちゃくちゃ良かったです。曲を発表する時はいつもピアノ弾き語りで、歌い始めた瞬間にみんながすごく集中して温度が上がるような感覚がありました。ゼミでは毎回みんなに課題を出していたのですが、eillは「気が乗らなかった」と、別のモードで作った曲を歌ったりもしていました(笑)。課題を守るという最低限のことはよくすっ飛ばしていましたが、それがまた名曲だったりするんです(笑)。そういう音楽家としての説得力も、高校生の時から持っていました。

eill:私、ルールっていうものが今もわからないんです。ここで転調して何が悪いの?この音を足して何が悪いの?って、基本的にそういう感じで。

RUNG HYANG:自分が気持ちいいと思う、その感度に抗わない人。素直で自分に正直。すごく素敵だと思う。

eill

eill:最近、過去のデモを聴いていたら、ルンゼミ時代に作った曲がいっぱい出てきました。その中の「私が嫌いな人」っていう少しジャズっぽい曲が、歌詞もめちゃくちゃなのにすごく良くて。たしか、発表会で歌ったんです。発表会で歌う=自分が作った色々な曲からシングルカットするようなことで、「音楽として面白いからいい。それで行け」と言われたことをすごく覚えています。
RUNG HYANG:いわゆる"ルール"って、それまでの世界の流れの中の正解だっただけ。常に何かがアップデートして、絶対に無理だと言われていたことが無理じゃなくなって…という連続で今がある。それは音楽も同じで、クラシックなものや先人の考えたフォーマットを知った上で、それをどう崩していくか、どう壊していくかというところから「こんな曲、今までなかったよね」というものが生まれたりする。ものづくりって発明だと思うんです。だから今後もどんな音楽ができるかわからないし、出揃ったなんて絶対に思いたくないですね。

RUNG HYANG

人柄から紐解くオンリーワンの音楽性

ーーきっとeillさんは、壊しているという自覚すらないのではと思います。

RUNG HYANG: 作っているものや信じているものを壊すって、勇気もエネルギーもいるじゃないですか。そこに関して、あまり守りに入らないタイプかもしれませんね。

eill:たしかに。今一緒に制作をしている方がいるんですが、その方とアレンジまで1回ブワッと作って、それを他の方と壊すというか取っ替えていくということをずっとやっています。壊しながら、みんなの知恵を足していくイメージ。私には信じられる仲間がいて、その仲間と作っているからこそできる音楽が、今のeillのサウンドになっていると思います。

RUNG HYANG

RUNG HYANG: これはすごく感覚的な話ですが、eillは崩れ落ちそうなくらい繊細なのに、どこかはすごくたくましいというか強い。人を不安にさせているようで実はさせていないという感じがあります。あと、人たらしだとも思います。今の制作の話もそうですが、ライブに行くと毎回チーム力のすごさを感じるんです。日を追うごとに巻き込んでいく人数や規模感が大きくなっていて、だけど気負わず、押さえ込まれず、より自分を発揮して人を巻き込んでいるeillがいる。頼りなさそうに見えて、実はめちゃくちゃ頼れる人なんですよ。

eill:本当?初めて言われた(笑)。

RUNG HYANG: たぶんだけど(笑)。

eill

eill:(笑)。そういうことで言うと、ルンさんはボーダーレスで生きている人。常に時代の波に乗りながら、自分をちゃんと守っているところがすごくかっこいい。そして全てを肯定してくれる人でもあります。それがたぶん音楽にも出ていて、弾き語りソングは名曲ばかりで毎回泣いています。かと思えばclaquepot さんと向井太一さんとのユニットやDRAMATIC SOULやTOKYO CRITTERSでは踊ったりもしていて、本当にボーダーラインがないんですよね。私が高校生の頃にはそういう日本の音楽家に出会えていなかったので、その始まりの人という感じ。出会った時からずっと理想の人です。

これからの音楽シーンに生きるということ

ーー今後、eillさんはシンガーソングライターとしてどういうことを大切にしていきたいですか?

eill:どうして生きているんだろうって考えた時に「あ、歌ってるからだ」みたいな感覚になります。歌っている時の自分に、すごく救われているんですよね。私は、日々生きていく中で自分のことをできるだけ愛してあげたいと思っているので、そう思えるような音楽を作りたいし、聴いてくれる人がちょっとでも自分のことを好きになって明日が輝くように、そんな日になるようにというメッセージをどの曲にも込めています。それはずっと大切にしていきたい。自分が音楽をやっている意味を忘れちゃいけないと思うし、それをちゃんと確かめながら<いろんな人の人生に花を咲かせられる音楽家>になっていたいと思っています。

eill

ーーRUNG HYANGさんは、これからの日本の音楽シーンについて、どのようなアーティストが活躍すると思いますか?

RUNG HYANG

RUNG HYANG:おそらく、作り上げられたものはもう通用しなくなると思います。企画や、誰かが作った型の中にはめられてそれっぽく見せる人たちが通用した時代は終わったと思うので。色々なものに対して疑いを持っていて、発言や生き方そのもので人を引っ張っていけるというか、人を救える人がアーティストになっていくだろうし、そういう人しか残らない気がします。疑い続ける人は自分の能力も常に疑い続けるし、世界の流れもそうですが、自分が正しいと思っていることは果たして本当に正しいのかという自問自答も繰り返す。情報に対するリテラシーもしっかり持てる人がアーティストを名乗っていくと思いますし、そうなることを願っています。

Interview&Text/山田邦子 Photo/堀内彩香

RUNG HYANG(ルンヒャン)
福岡県・筑豊生まれの在日コリアン3世。卒園ソングをテーマにした「さくらびより」がYouTubeで話題を呼び2012年にメジャーデビュー、情報番組や音楽番組に多数出演。自身の活動のみならず多くのプロデュースも手掛け、様々なアーティストを輩出した「ルンヒャンゼミ」が各方面で注目を集めている。SIRUP、韻シスト、向井太一、Claquepotといった音楽シーン重要人物とのフィーチャリング楽曲も次々と発表し話題。誰かの生活を覗き見しているようなリアルなリリックと、Jazz、Hip Hop、Soul、フォークと様々なジャンルを取り入れた「雑食」スタイルで進化を続けるシンガー ”ソウル” ライター。

eill(エイル)
東京出身。ブラックミュージックを下地にした音楽性と、甘さ/切なさ/艶感/力強さが共存した歌声で魅了する シンガーソングライター。 15歳から歌い始め、同時に PC で作曲も開始。2018 年 6 月にシングル「MAKUAKE」でデビュー。多彩なソングライティング・センスが高い評価を受け、BE:FIRST、ジャニーズWEST、NEWS、 テヨン (ex 少女時代 )、 EXID 等に楽曲を提供。情感豊かな歌声に魅せられたアーティストも多く、SKY-HI、PINKSWEAT$ 等、国内外のアー ティストの楽曲に客演で参加。
2021 年 4 月に TV アニメ『東京リベンジャーズ』の ED 主題歌に起用されたメジャーデビュー第一弾シングル「ここで息をして」をリリースし、その後も映画・月9ドラマ・Abemaドラマ主題歌、TVCMソングなど数々のタイアップを担当。2022年にメジャーファーストアルバム『PALETTE』をリリースし、タイトル楽曲「palette」は「アクエリアス」TVCMソングに起用された。6月には延期となっていたeill『BLUE ROSE TOUR 2022』の名阪公演の振替公演と、川崎・CLUB CITTA' での追加公演も決定している。